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234.読書=『新しい労働社会』 [29.読書]

 濱口桂一郎『新しい労働社会-雇用システムの再構築へ』(岩波新書、2009年)
 この新書は、現在日本の労働社会が直面している問題-働き過ぎの正社員、非正規労働者を巡る問題などについて考え、日本における雇用論議に一石を投じたものである。
 この本で、日本型雇用システムと呼ばれる労働社会のありようの根源に立ち返って考察する序章の記述は、この学習ノートにとってみても、教員給与の姿を考える上で、大きな示唆を与えてくれる。一部を抜粋して掲載しておく。

   1 日本型雇用システムの本質-雇用契約の性質

 職務のない雇用契約
 日本型雇用システムの最も重要な特徴として通常挙げられるのは、長期雇用制度(終身雇用制度)、年功賃金制度(年功序列制度)および企業別組合の三つで、三種の神器とも呼ばれます。これらはそれぞれ、雇用管理、報酬管理および労使関係という労務管理の三大分野における日本の特徴を示すものですが、日本型雇用システムの本質はむしろその前提となる雇用契約の性質にあります。
 雇用契約とは、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」(民法第六二三条)と定義されていますが、問題はこの「労働に従事する」という言葉の意味です。雇用契約も契約なのですから、契約の一般理論からすれば、具体的にどういう労働に従事するかが明らかでなければそもそも契約になり得ません。しかし、売買や賃貸借とは異なり、雇用契約はモノではなくヒトの行動が目的ですから、そう細かにすべてをあらかじめ決めることもできません。ある程度は労働者の主体性に任せるところが出てきます。これはどの社会でも存在する雇用契約の不確定性です。
 しかし、どういう種類の労働を行うか、例えば旋盤を操作するとか、会計帳簿をつけるとか、自動車を販売するといったことについては、雇用契約でその内容を明確に定めて、その範囲内の労働についてのみ労働者は義務を負うし、使用者は権利を持つというのが、世界的に通常の考え方です。こういう特定された労働の種類のことを職務(ジョブ)といいます。英語では失業することを「ジョブを失う」といいますし、就職することを「ジョブを得る」といいますが、雇用契約が職務を単位として締結されたり解約されたりしていることをよく表しています。これに対して、日本型雇用システムの特徴は、職務という概念が希薄なことにあります。これは外国人にはなかなか理解しにくい点なのですが、職務概念がなければどうやって雇用契約を締結するというのでしょう。
 現代では、使用者になるのは会社を始めとする企業が多く、そこには多くの種類の労働があります。これをその種類ごとに職務として切り出してきて、その各職務に対応する形で労働者を採用し、その定められた労働に従事させるのが日本以外の社会のやり方です。これに対して日本型雇用システムでは、その企業の中の労働を職務ごとに切り出さずに、一括して雇用契約の目的にするのです。労働者は企業の中のすべての労働に従事する義務がありますし、使用者はそれを要求する権利を持ちます。
 もちろん、実際には労働者が従事するのは個別の職務です。しかし、それは雇用契約で特定されているわけではありません。あるときにどの職務に従事するかは、基本的には使用者の命令によって決まります。雇用契約それ自体の中には具体的な職務は定められておらず、いわばそのつど職務が書き込まれるべき空自の石版であるという点が、日本型雇用システムの最も重要な本質なのです。こういう雇用契約の法的性格は、一種の地位設定契約あるいはメンバーシップ契約と考えることができます。日本型雇用システムにおける雇用とは、職務ではなくてメンバーシップなのです。
 日本型雇用システムの特徴とされる長期雇用制度、年功賃金制度および企業別組合は、すべてこの職務のない雇用契約という本質からそのコロラリー(論理的帰結)として導き出されます。

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