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456. 俸給表の作成方法(続き) [49.「人事院月報」拾い読み]

 前回、人事院月報第29号(昭和27年8月号)を取り上げ、当時の俸給表の作成方法に関する記述を拾い読みした。その前年の勧告にかかわるものなのだが、たまたま、国会会議録で面白い記述を見つけた。当時の俸給表の作成にかかわって、当時の人事院給与局長である瀧本忠男の説明である。抜粋する。

第011回国会 人事委員会 第2号
 昭和二十六年九月二十五日(火曜日)

○説明員(瀧本忠男君) 人事院が先般いたしました勧告の内容につきまして少しく詳細に御説明いたして置きます。
 今回の勧告におきましては、いろいろ給与の体系上の問題もあるのでありますが、併し人事院は只今給与準則、即ち職階制に基きまする給与体系というものの準備を極力急いでおります。間に合えば臨時国会にも提出したいというような考えでこの準備を進めておるのでありますが従いまして多くの例題はその機会に譲りまして、今回の勧告におきましては、給与水準の引上げということと、又緊急止むを得ない二、三の点につきましてのみ勧告をいたす、こういうことに相成つた次第であります。即ち主な点はどういうところであるかと申しますると、この俸給表の額が、従来の八千円ベースというものに比べまして見かけ上では三割乃至五割程度上つたことになつておりまるが、即ち八月一日におきまして公務員一人平均一万一千二百六十三円、こういうふうな金額になるような俸給表の改訂を勧告いたすということであります。
 その次に今回は企業性を持つております官庁、例えば郵政省でありますとか電通省、又は造幣庁、印刷庁、それから通産のアルコール工場、こういうような企業的色彩の濃い現業に対しましては、その作業の特殊性に応ずるために特別俸給表というものを新たに新設いたそうと、併しこの問題は職階制に基きます給与準則のときに、抜本塞源的に解決するものでありまするから、今回勧告いたしましたこういつた企業的色彩を帯びる現業に対する特別俸給表というものは中途半端な感じであるというようなことが言えるかも知れません。これは給与準則のときにより一層合理化された形になるだろうというふうに思います。
 それから従来は年末手当というものが半カ月分支給されることになつております。併し民間の事業場等の定期的に支給されまする給与以外のいわゆる臨時の給与、俗にいう賞与といつたようなものでありますが、そういうものの支給状況を調べて見ますると、やはり相当出ておる。勿論民間の会社のことでありまするから、営業成績或いはそういつたことに応じましてお金の出ないところもありますが、おおむね出ておる。でその平均をとつて見ますると、一年につきまして定期的に支給される給与の一・四カ月分は出ておるという状況であるのであります。そういう事情がありまするし、一方におきまして年末或いはお盆といつたようなときに、これは我が国の国民慣習によりまして、非常に出費が多い、そういう生活上の慣習もあるわけでありまするから、両方を睨み合せまして、やはり公務員にもこの両方の時期におきまして何らかの手当が出るのが適当であるというような考えを持ちまして、今回はお盆並びに年末、即ち六月と十二月のしまいに特別手当を支給してもらいたいということを考えております。これはいろいろありまするが、まあ民間は一・四カ月分出ておりまするが、公務員の場合は両者を合しましてほぼ本俸、扶養手当、地域手当等の一月分、即ち六月末に出るのが〇・二カ月分、年末に出るのが〇・八カ月分ぐらいということをお願いした次第であります。扶養手当でありまするとか、特殊勤務地手当というようなものにつきましては、おおむね現行通りといたします。但し特殊勤務地手当につきましては、この給与べースの勧告或はこれに伴いまする法律案への意見の申出ということとかかわりなく或は関係いたすかも知れませんが、まあ研究中でございまするが、若干特殊勤務地手当につきましても、給与準則に移行いたします前に合理化を図りたい。本質的にはこの問題はやはり給与準則に繋がつておりまするので、給与準則のときにおおむね適正に特殊勤務地手当の処理ができるのでありまするが、若干はその前にいたしたいということを考えております。扶養手当につきましてはおおむね現行通り。それからこの勧告につきましては勤務地手当は本年五月十二日に勧告いたしました支給地域区分によるということに一応いたしております。併しながらこの勤務地手当が適正であつたかどうか、即ち地域によつて生活の著しく困難である地域に対しましては、地域給を支給する計画になつておりますが、そのために人事院は絶えず調査研究しなければならないということに法文上も明記してありまするから、人事院は絶えずこの調査、研究をいたして参つたのであります。でおおむねそういうものの資料を持合せておりまするので、目下そういうものの検計もいたしております。場合によりましては或は五月十七日に勧告いたしましたものを若干訂正するということになるかもわからないというふうに思つております。以上のようなものが主な点でございまするが、そのほかに奨励手当というものを制度化しよう。これは現在におきましても、例えば特殊勤務手当の中に奨励的なものが出ております。給与法によらない、給与法以外のものを別の法律等によりまして奨励手当的なものが出ておるものもあります。そういつたものを一応この給与法の枠の中へ入れまして、そして今後奨励手当というものを合理化して行く基礎を作りたい、こういうことで考えておる次第であります。
 まあ以上のごとく今回の勧告におきましては俸給表の額をおおむね三割乃至五割上げまして、平均給与水準といいますか、そういつたものを従来の八千円水準から一万千二百六十円程度にいたしたいというのが骨子であります。それに二、三の緊急止むを得ませんものを申出ると、こういうことになります。
 で問題の中心は俸給表でございまするが、俸給表の作成に当りましては、従来とても人事院は標準生計費という問題と、それから民間給与、この二つを基礎にいたしましてそして俸給表の作成をいたしておつたのであります。今回もその方法に変りはございません。標準生計費のごときは従前とおおむね同一の方法をとつております。ただ国民食糧需給計画というものが、昨年の七月から本年の六月までの間のものが従来のものに比べましてカロリー等も若干殖えております。従いましてこの標準生計費はカロリーが殖えて又価格も昨年よりは消費財の価格が上つておりまするからそういう意味におきましてこの標準生計費の額が違つて来ておるこういうことは申上げ得るのであります。税込で勤務地手当の附かない地域に成年単身男子、即ち十八歳程度で四千二百円ということにいたしたいというふうに考えております。
 民間給与調査につきましては従来よりも相当進歩いたした方法を採用いたした次第であります。どういう方法かと申しますると、従来は民間給与調査をやりましても、その中にただ一点、即ち十四級六号、通し号俸で申しますると七十号というようなところを一点だけ用いたのであります。そして標準生計費を二級三号に押えるということで、この両者を等比級数曲線によりまして結びまして、通し号俸の七十号というものを作り上げまして操作をいたしたのであります。この中で、折角やりました民間給与調査の中で、一点どこが違つておるかと言えば、等比級数曲線というものは民間の級別の給与の平均値の曲線を作つてみますとこれがおおむね等比級数曲線になりますので、そういう意味では違つている。併しポイントとしては十四級六号、而も十四級六号と申しますれば外局の長官が四、五年勤め上げておりまして、そして初めて到達し得られるようなところで実際にはそういうポジシヨンには人がいないというようなことになつておるのでございます。まあそういうようなところを押えておつた。言い換えればこれはまあ計算方法でそういう方法をとつたのでありまするが若干上のほうを押え気味であつたということが言い得るのではないか、これは批評する人によつて違うでありましようが、そういう見方もでき得ると考えております。今回はそういう方法をとりませんで、公務員の場合と同様の職務内容並びに責任の程度を有しまする、即ち公務員の場合職務の級、一級、二級、三級、そういう級別に民間において同様の職務内容並びに責任の程度を有する職員の給与というものは一体どういうふうになつておるかということを調べまして、そういうものの平均値を作つたのであります。従つてその平均値を結んで、それを数学的に補正をいたして参るということになりますればそういう線こそむしろ民間の給与に非常にマツチしておるものであるということが言えるんではないかというふうに思うわけであります。今回はそういうふうにいたしまして、各級別の平均値を補正いたしたものを根幹として使うことにいたしました。ただそれでは通し号俸の各号俸がすぐ出て参りません。この各級の平均的なものをどこに押えたかと申しますと、それは現在の一般俸給表の各級の俸給の幅がありますが、そのおおむね真中辺に押えます。そうするとそれが通し号俸で何号であるかということがこれはおのずからわかるわけであります。そういうふうにいたしまして各級の通し号俸が何号であるかということを見まして、そうしてその間の格差が幾つあるかということからその間を割つて行つたわけであります。尤もこれは何十何円という端数が出ましては取扱いも困難でありますから、そこをラウンド・ナンバーにいたしまして、全体の通し号俸を作る。こういうふうにいたしまして作りました。ただ一級、二級の辺になつて参りますと民間給与のほうは我々の使つております標準生計費を下廻るのであります。併しながらこれを下廻らしては人事院の従来の給与の作り方に反しますので、標準生計費は確保する。これは現在公務員の二級の平均年齢を求めて参りますと十八・六歳ということになるのであります。ところで二級の中心は幾つかと申しますると、二級四号であります。二級四号では十八・六となるのでありますから、十八歳というのはそれよりも少し下ではないかというので、二級三号というふうに押えました。従つて二級三号を四千二百円、いうような方法をとりまして、この民間の給与調査から得ました曲線を少しく補正して下のほうを上げてあるのであります。そういうふうにいたしまして作り上げたものが今回の俸給表の基礎になつておる数字である。こういうふうにお考え願いたいのであります。
 なお民間給与調査をやるにつきまして従来は百人以上の事業場を用いました。併しながら今回は五十人程度に下げております。この点もいささか問題になる点であろうかと思いますが、併しながらこれを押えたということは、これは成るべく多くの事業場を採用したいというのが趣旨であります。特に東京或いは大阪、大都市の周辺にありましてはなかなか大きな工場というものは少い。五十人くらい従業員のおります事業場というものは相当大きな工場であります。又組織ができております。こういうところを問題にしないというのも一応どうかというふうに考えまして、五十人というふうに考えたのであります。勿論我々が公務員の職務の級と同等であるということを比較いたしますにつきましては、やはりその職務内容、責任の程度ということを重視しておりますから、必ずしも五十人の事業場と、或いは千人或いはそれ以上の事業場というものと同等に扱つたということにならないのであります。それはやはり規模の程度によりまして、責任の程度もおのずから違うというような観点から、公務員の責任或いは職務内容でも合わすようにとつておりますから、小さい事業場をとつたら全体の平均が低くなつておるのではないかというこういうような大雑把な懸念はないのじやないか、殊に今回やりました我々の民間給与調査というものは、勿論人事院でやります作業でありまして、従いましてこれに従事する人間というものは数が限られております。相当高度の調査でありますから、誰にでもやらすわけに行かないということでございます。又結果を早くまとめなければならないという意味からも大きな調査をやることができない。国勢調査のように結果が一年あとに出てもよいというものではありません。従つてこれは規模が限られておるということになるのであります。併しながらこの限られたこの予算並に人員の範囲、又この集計の期間の範囲で我々が如何にしたらより一般的な情報を正確な正確といつても限度があります。その誤差の範囲というものをちやんときめましてその範囲におきまして立派な調査が得られるかということにつきまして非常に研究いたしたのであります。近来アメリカにおきましては集計学というものが非常に発達しておりまして、いわゆる無作為抽出法というものを用いまして、この調査の結果というものを非常にはつきりさせる、一定の規模でやりましても、その対象等の選択に相当の注意を払いました結果、それが高度の信頼性があるというような方法によつてやつておるのであります。最近におきまして人事院でやりました民間給与調査、これはちよつと余談になるのでありますが、民間給与調査の調査方法というものは非常に進歩した方法であるというので、統計委員会のほうでも着目されまして、日本にもこういつたいい調査があるのだということをアメリカのほうへ報告いたしたというような例もございます。ちよつと余談でありますが、かくのごとく我々の調査方法というものは相当研究されたものであるということを申上げたいのであります。
 以上のような方法によりましてこの民間給与調査というものを行いました。その結果俸給表を作成いたしたわけであります。従いまして我々の作成原理というものは従来と何ら変つていない。ただ従来行なつておりましたことをより厳格に表現するという方法にしたので、そこに何らの意図は入つていない、こういうことを申上げたい。我々は最初昨年の年末頃に昨年の五月の基準で勧告したのでありまするが、これがまあ本年の一月から実施されておる。非常にずれがあるということはこれは当然認めております。昨年の基準におきまして、即ち十二月或いは十二月頃に昨年の五月以降朝鮮動乱等が起つております。その結果いろいろ経済事情に変化があつたということは御存じの通りでありますが、最初船賃が上り、生産財の暴騰、或いは繊維品等の思惑等もありました。併し消費財にそういう結果が画然と現われて来たというのはこれは比較的後の話でありまして、年末押迫つた頃からそういう状況がぼつぼつはつきりして参つたのでございます。そういう状況がございましたので、人事院といたしましては民間給与調査、即ち我々が給与べース改訂の基礎資料として用いまする民間給与調査というものは、これは例年のように五月になつてやつておつたのでは間に合わないのではないかというようなことを考えまして、特に三月分の民間給与調査について調査を行なつたのであります。これは我々は予算の点もございまするが、本年度の予算が使い得る最も早い時期にやつたということになつております。その三月分の調査をやりました。そうしてそれでは三月で勧告したらいいではないかというような議論も勿論出て参るわけでありまするが、その後の状況を見ておりますと、なかなかこの三月でやつたのではその民間給与調査の結果が得られます頃になりますると、もうすでに新しい資料が得られておる。例えばこのCPS等によりますと、三月よりも新しい資料が得られておるという状況に達しておつたのであります。そういうこともございまして、いろいろその三月から後の推移を見ておつたのでありまするが、これは三月でやるよりもむしろ五月当時得られた一番新らしい資料、五月の資料でやつたほうがより公務員の給与に適応する。即ち我々は三月より五月のほうが三・七%程度はすべて上廻つているということを統計上確認といいますか、まあ見当を付けたわけであります。三月のままでやるよりも五月でやつたほうがよろしいということになつたのであります。そのうちに減税の問題でありまするとか、その外主食の値上げの問題でありますとか、電力料金、或いはその他ガスとかいろいろなものの値上げというようなことがいろいろ言われて出した。決定したわけではありませんが、相当そういうことが取上げられている状況になつた。こういう問題も入れるべきであるかどうかということについてもいろいろ検討いたしたのでありまするが、併し確定しない事柄は何としても取上げにくい。人事院は従来確定した資料に基きまして勧告を行なつておつたのでありまするから、従つて減税のことがあろうとも、これはまだ確定していないから取上げられない。又当時におきまして電力料金或いはガス料金その他のものも確定しておらないという状況でございましたからこれも取上げられない。ただ主食の値上げだけは八月一日付を以て確定いたしましたので、主食はこれは取入れることにいたした次第であります。そういう工合でありまして、五月の水準を基礎にいたし、主食の値上りだけは八月一日から行われましたものを入れまして、そうしてこの勧告にありまする給与俸給表並びに給与体系というものが八月一日から実施せられるということを期待いたしまして勧告いたしたいということになつております。
 我々のほうでいろいろ勧告に使いました資料等も、最近まとめまして人事院月報に集録いたしたのでありますが、昨日できて参りまして、ずいぶん校正等に注意いたしたのでありまするが、なお間違いがないだろうかということを目下検討しておりまするので、若しあれば正誤表を附けまして当人事委員会のほうにも成るべく早く差出したいというふうに思つております。以上御説明申上げます。


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455. 俸給表の作成方法=人事院月報第29号 [49.「人事院月報」拾い読み]

 人事院月報第29号(昭和27年8月号)は、給与勧告特集である。トップの記事の見出しは、「公務員の給与引上げを勧告 総平均月額13,515円に 5月1日から実施を要望」となっている。このノートが注目をするのは、勧告の内容そのものではなく、勧告案作成の経緯を説明している記事である。とりわけ、23頁以下の「俸給表の作成と新俸給額」の内容はこのノートにとって大変興味深いものとなっている。
 冒頭、次のように記述している。

 俸給表の作成方法は昨年と同様であって、民間の職種別の賃金を公務員の本俸相当額に換算したものを公務員の職務の級別に格付けしたものの平均額と、独身青年男子の標準生計費という俸給表の要点、要点における基礎金額に使用する方法をとっている。(本誌第17号参照)(23頁)

 ( )に「本誌第17号参照」とあるので、そうすればよいのかもしれないが、何せ県立図書館で禁帯出の図書を閲覧し、一部コピーしながらの考察なので、このまま第29号で確認していくこととする。
 さて、続いて細部の点について昨年との差異を述べていくが、俸給表の作成方法の基本を理解する観点から適宜抜粋する。

(4) 俸給相当額とその級別平均額の算出(第16表)及びこれらについて最もよくあてはまった曲線としての等比級数曲線の求め方(第18表)、さらにこれを3月から5月に換算したものを勤務地手当のつかない地域に直す操作については全く昨年度同じである。(第17表、第19図、第20表)
(5) 上記の標準生計費及び公務員の級別にみた民間給与の俸給相当額の補正額を一般俸給表の各級の中央号俸に対比させて、各号俸の金額を刻むこと及び民間の初任給の考慮のしかたについても、別に昨年と代わるところはない。(第20表及び第21表)(同頁)

 これまで、瀧本忠男著書『公務員給与制度総説』(学陽書房、昭和25年)や弥富賢之著『職階制と人事行政』(教育資料社、昭和27年)、瀧本忠男・慶徳庄意・船後正道著『新俸給制度詳解』(学陽書房、昭和32年)などの古書の記述を紹介し、だいたいのイメージは理解してきたが、ここには更に具体の手法が示されている。

 まず、民間給与調査職種を公務員の職務の級に格付けする。(第15表)
 次に、公務員の職務の級別にみた職種別民間給与額から平均俸給相当月額(東京換算額)を算出する。例えば、職務の級=2については、職種別では、給仕5,897円、圧延見習工7,854円、溶接見習工5,671円、機械工作見習工4,439円、写図見習工5,513円、印刷見習工4,121円、紡績見習工4,878円となっており、職務の級別は5,482円となっており、職務の級=10では、経理課長29,087円、庶務課長23,882円、資材課長25,428円、技術課長26,136円、冶金作業職長25,083円、機械工作職長21,415円で、職務の級別は25,172円。いずれも単純に平均を算出している。この表の注意書きには、俸給相当月額の算出方法など、細かな点が示されている。(第16表)

 次に、第16表に記載している民間給与の俸給相当額から職務の級別の俸給相当額を算出していく。第17表に示されている。具体的な金額は省略するが、表の構成(手順)は次のとおり。
 職務の級=(A)、俸給相当額(27年3月東京に換算した額)=(B)、(B)の補正額(最小自乗法による y=15,715 1.1023X)=(C)、27年5月換算額(C×1.0116)=(D)、勤務地手当のつかない地域への換算額(D×0.8)=(E)
 この結果は、第18表に俸給相当額を縦軸とし、職務の級を横軸とする「俸給相当額算出図」が示されている。民間給与調査により算出した俸給相当額(B)を結んだ線は折れ線グラフになるのだが、最小自乗法により補正された額(C)を結んだ線は等比級数曲線となっている。

 30頁には「一般俸給表作成一覧図」(第20表)なるものが掲載されている。横軸は職務の級で1級から14級までとなっている。縦軸は金額である。俸給曲線と思われる線は、等比級数曲線ではなく、直線となっている。ただし、3級から2級・1級へはその直線よりも高い額の線が引かれている。各職務の級には上下の幅があり、その真ん中辺りを直線が通っている。そして、よく見ると、縦軸の金額の間隔は同じではなく、同じ1,000円の幅であっても金額が上昇するに従って幅が狭くなるように描かれている。等比級数曲線を直線に直した場合の金額が記されているのである。

 31頁には「新俸給額の内容」と題した第21表が掲載されている。これを見ると、2級3号俸の位置に「成年男子標準生計費」として4,700円が記載され、同号俸の新俸給月額の欄は4,700円となっている。そして、民間給与相当額の級別平均額を見ていくと、1級は括弧書きで3,586円と記載され、対応する1級の号俸は6号俸までのうち3号俸となっており、新俸給月額は4,500円となっている。生計費を考慮したと思われる。以下、2級4,357円→2級7号俸中の4号俸4,800円。3級5,294円→3級7号俸中の5号俸5,500円。4級6,432円→4級8号俸中の4号俸6,250円。5級7,815円→5級10号俸中の5号俸7,500円。6級9,495円→6級11号俸中の6号俸9,500円。7級11,538円→7級10号俸中の5号俸11,550円。8級14,018円→8級10号俸中の5号俸14,000円。9級17,034円→9級10号俸中の5号俸17,100円。10級20,696円→10級8号俸中の4号俸20,800円。11級25,147円→11級6号俸中の3号俸25,200円。12級30,555円→12級6号俸中の3号俸30,600円。13級37,126円→13級6号俸中の3号俸37,200円。14級括弧書き45,110円→14級6号俸中の3号俸45,200円となっている。
 ずらずら書き連ねたのだが、概ね各職務の級の中間に位置する号俸(中間に位置する号俸がない場合にはその下(又は上)の号俸)と民間給与相当額の級別平均額とのバランスをとっている。
 俸給表は通し号俸となっていて、直前号俸との差額については、100円から始まって、号俸が上昇していくに従って、150円、250円、450円、500円、650円、800円、1,000円、1,200円、1,400円、1,600円、1,900円、2,300円と上昇していく。
 こうして、この時代の俸給表は作成されたのであった。


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454. 教員の勤務時間に条例で上限? 大阪市 [8.トピック]

 NHK関西ウェブニュースに次のような記事が掲載された。(7月8日6時41分)

 教員給与見直し 大阪市検討へ
 大阪市は、優秀な教員を確保するための取り組みの1つとして、教員の初任給の引き上げなど、給与体系の見直しを検討することになりました。
 大阪市は、子どもの学力の水準を引き上げるためには、優秀な教員を確保することが必要だとして、7日開かれた市の総合教育会議では、その具体策が話し合われました。
この中で、吉村市長は、「優秀な人材を集めるためにも全国一高い初任給を実現したい。また、頑張っている先生が報われる仕組みが必要だ」と述べました。
 これを受けて、大阪市は、今後、教員の初任給の引き上げや、能力が高い教員は早く昇進させることなど、給与体系の見直しを検討することになりました。
 一方、大阪市は、教員の長時間労働の解消に向けて、すでに一部の学校で導入している部活動の外部委託をさらに広げることも検討するとしています。

 7月12日の産経WESTは次のように伝えた。(2017.7.12 08:38更新)

 能力に応じた給与制度に 大阪市教委、30年度から
 大阪市教育委員会は、初任給の引き上げなどを盛り込んだ新たな人事給与制度を平成30年度から導入する。一般教諭と首席指導教諭の間に新たな役職を設け、能力に応じた昇給の仕組みに改める内容で、予算編成に取りかかる30年1月までに労働組合との交渉を終えたい考えだ。
 新制度は、一般教諭が37歳までに新設される役職の選考に合格しない限り、それ以降の昇給を停止する一方、合格者には職務の困難度や責任に応じて昇給に差がつく内容。市は、能力の高い教員が早く昇進できるようにすることで、教頭や校長など管理職の「なり手不足」の解消につなげたい考えだ。
 また、大阪市の教員の初任給は政令指定都市20市の中で11番目で、近畿でも神戸市や京都市より低いため、市教委は具体的な引き上げ水準を検討するほか、優秀な人材の確保につながる研修制度なども盛り込むとしている。
 吉村洋文市長は総合教育会議で「頑張っている先生がきちんと評価され、昇給する制度が必要だ。全員(の給与)が上がっていく現行の制度は行き過ぎだ」と述べた。

 そうか、あの能力主義の給与制度をいよいよ実施するのか…。(440. 教員給与を能力重視に(その後)、427.教員給与を能力重視に、大阪市教委)

 ところで、7月8日の産経新聞を開いてみると、「教員残業に上限 大阪市 規制導入検討」との中見出しで、同じ大阪市の総合教育会議で出た別の話が記事になっている。

 大阪市は7日開いた総合教育会議で、市立学校の教職員の時間外勤務(残業)時間に上限を設ける方針を決めた。改正労働基準法に明記された時間外労働の上限規制は私立学校と国立大学附属校の教員には適用されるが、公立校の教員は対象外。このため市は独自に条例や規則で制度化する必要があると判断した。(以下、略)

 う~ん。給特法がある下で、どうするのかな。労基法37条の割増賃金制度は適用除外された上で、労基法36条のサブロク協定が空振りになる同法33条3項が適用され、しかも限定4項目という枠をはめ、あとは給特法や労基法の関知しない世界(安全配慮義務は適用されるけれど)という組立なのに、そこにどのように条例や規則で規制を導入しようというのか…。

 もしかすると、高度プロフェッショナル制度の創設を盛り込んだ労働基準法等の一部を改正する法律案の規定が参考になるのかもしれない。
 厚生労働省のHPから、平成27年4月3日国会提出の法案を見る。
 まず、概要を見ると、「職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。」とある。
 「健康確保措置等を講じる」というところがポイントになる。
 健康確保措置等について法案を見ると、確実に措置を講じないとおいけない事項は次のとおりになっている。

第四十一条の二
 三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(次号ロ及び第五号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
 四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
  イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
  ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
  ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。

 要するに、まず、「健康管理時間」を把握すること。
 次に、①勤務間インターバル制度の導入、②健康管理時間の上限設定、③年104日以上の休日取得のいずれかの措置を実施すること。
 ポイントは、「勤務時間」という概念を使用せず、「健康管理時間」という概念を使用したところにある。この「健康管理時間」は「勤務時間」と一致するとは限らない。そのような概念であれば、給特法が作り上げている教員の勤務時間管理の世界にも、上手くなじむかもしれない。そうすると、大阪市が条例又は規則で規定することの可能性も見えてくるが…。さて、どうなっていくのか…。


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453. 給特法下の教員の労働時間管理の特徴と問題 [8.トピック]

 『季刊教育法』(第192号)(2107.3.25発行、エイデル研究所)の特集は、「ブラック部活」その2である。
 表紙の説明では、「「部活動改革元年」であった2016年。ようやく改革の「兆し」は見えるが、それは「かけ声」だけなのか-。今号は「その1」に引き続き、部活動における教職員、加えて児童・生徒の実態に迫る。反響を呼んだ「ブラック部活」第2弾!」としている。
 特集の冒頭は、「まだまだ黙っていられない!「ブラック部活」の実態2」と題した座談会なのだが、このノートで注目するのは、小川正人教授執筆の「教員の長時間労働と給特法―給特法の問題点と改廃の課題―」である。小川正人教授は、かつて中教審・教職員給与の在り方に関するワーキンググループの副主査を務めた方であり、給特法の問題点を深く理解している人物の一人といってよいと思う。

 小川教授は、「給特法下の教員の労働時間管理の特徴と問題」とする項で、3つの視点から整理し、指摘する。概略を記す。
 第1:個々の教員に正規の勤務時間の割振りを適正に行い、時間外労働が生じないようにすることになっているが、実際にはそうした割振りでは対処できないほどの時間外労働が生じているのが実態。それらの時間外労働の多くが管理者の「指揮監督下」にある労働時間ではなく、教員の任意の自発的行為であるとされて長時間の時間外労働を抑制できるように機能するものにはなっていない。
 第2:歯止めとして、時間が労働を命じることのできる業務を四項目に限定し、その四項目についても時間外労働を命じることができるのは「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるとき」と規定。そうした規定にもかかわらず時間外労働の上限が定められておらず、無定量の労働義務を課されている点で労働時間制と相容れないという重大な欠陥がある。また、教職調整額は労働時間制や時間外勤務手当の趣旨から外れた特異な制度であり、憲法27条の規定に照らして問題。
 第3:本来、長時間労働のブレーキの役割を果たすことが期待される時間外勤務手当が、給特法下では、教職の「特殊性」を理由に長時間労働の抑制機能を有していない一律支給の教職調整額に取って代わられ労働時間管理を適正に行うという意識を希薄化させていることは否めない。

 次に、萬井隆令(龍谷大学名誉教授)による給特法がらみの判例の3類型、①「調整」推定説、②「労働」性否定説、③超勤手当一切不要説を簡単に説明した後、近年の判例の主流でアル「労働」性否定説の論理とその問題について、2007年9月27日の札幌高裁判決を概観することで確認している。ポイント部分を抜粋する。
 「判決では、先ず、給特法の趣旨を確認する作業を行い、教員の職務は「本来的に教育職員の自発性、創造性に期待するところが大きいという面で、いわゆるプロフェッションの一員として、一般的な職業とは異なった特質を持つ」ことが強調され、その上で、教員の勤務(形態)の特殊性から労基法37条の適用を排除して勤務時間の内外を問わず包括的に評価する教職調整額が支給されているとその正当性を確認している。そのため、教員が正規の勤務時間を超えて勤務した場合でも、時間外勤務手当は支給されないと解するのが相当である、と結論づけている。」

 「しかし、あらゆる時間外勤務が時間外勤務手当支給の対象にならないと断じている訳ではなく、時間外勤務に至った事情、職務内容、勤務の実情等では手当支給の対象になる場合もあるという考え方も示している。その点について、判決は、校長等の具体的な職務命令があった場合や、無くてもそれと同じように教員の自由意志を強く拘束するような状況の下で時間外勤務が行われ常態化しているような場合で、しかも安全配慮も十分なされていない場合には時間外勤務手当支給は認められるべきであるとしている。」

 「判決では、時間外勤務が校長の職務命令かもしくは職務命令と同視できるほど教員の自由意志を強く拘束するような形態で行われたのであれば時間外勤務手当の対象になるが、当該の業務は教員の自発的意志で行われたもので時間外勤務手当支給の対象にならないと判断している。教員が担当する校務分掌や部活動、年間教育計画等の多くは確かに限定四項目に含まれるものではないが、学校と教員の業務といえるものであり、それを欠いては学校の教育活動や経営が成り立たない重要な業務である。それにもかかわらず、それら業務を受けるが受けないか、遂行するかしないかは学校長の指示ではなく個々の教員の自由意志による示達的行為であるとして「労働」性を否定している。」

 萬井が給特法下の時間外勤務手当請求事件判決で示された「労働」認識は他の民間企業の就業問題を扱った労働裁判判例のそれとの断絶が大きすぎると批判していることについて判例を引いて紹介した後、次のように述べる。
 「教員の職務・勤務時間の殆どが、学校の教育活動や経営を構成する業務内容について学校長(副校長、教頭)が自らの責任・権限の下で各教員に割振りしているものであり、個々の教員の自由意志による自発的行為によるものであるとはいえない。学校長(副校長、教頭)の責任・権限の下で割振りされた業務である以上、その業務を個々の教員が創造的・自発的に遂行するか否かにかかわらず、その業務遂行は学校長の指揮命令下にある「労働」であることは明白である。」

 小川教授は、「教員の時間外労働の改善に向けて」と題する最後の説で次のように述べる。

 「以上見てきたように、給特法は、教員の長時間の時間外労働を抑制する機能を有していない。今日、大きな問題となっている部活動についても、学校長が学校の教育活動の一環として教員に部活動顧問を割振りしているにもかかわらず、時間外勤務を命じることができる「限定四項目」に該当する業務でないため、正規の「労働時間」とは認知されず、教員の任意の自発的行為と見做されている。」

 小川教授はこのような見解を示されるが、そもそも給特法は、教員の長時間の時間外労働を抑制する目的をもって制定されたものではない。教員に対しては超過勤務手当を支給しないとう運用を行ってきたことに対して超過勤務手当の支給を求める訴訟が多数提起され、超過勤務手当の支給を容認する判決が続出する中、いわば超過勤務手当の肩代わりをする教職調整額を支給することでもって立法的解決を図ろうとしたのが主たる目的であった。確かに、超過勤務を命じないことを原則とし、限定4項目を制度として設けたのではあるが、罰則規定を設けなかった時点で歯止めにならないことは必然ではなかったか。
 この点に関して、超過勤務手当の支給は長時間労働を抑制する一定のインセンティブはあるのかもしれないのだが、一方、罰則を設けず割増賃金制度のみのアメリカは、欧州各国より年間の勤務時間が長かったのではなかったか。また、現在の我が国の民間企業や中央省庁の長時間労働の実態をどう理解すべきなのか。教員の時間外労働は、OECDの調査に基づけば更に厳しい実態なのではあるが、割増賃金制度の存在だけでは抑制効果が小さいだろう。

 続いて、小川教授は、部活動について学習指導要領における取扱いや国賠法の適用関係を述べた上で、「そうした部活動の顧問である教員の業務は、教員個々による任意の自発的行為であるとするのはあまりにも無理のある説明である。事実、そうした乖離を埋めるために部活動手当という特殊勤務手当が支給されてはいるが、それはそうした乖離を誤魔化すための弥縫策ともいえ事実上の時間外勤務手当というべきものである。」と主張されている。
 そのように理解され主張される気持ちは分かる気はする。しかし、もし、給特法が前提とする教員の職務と勤務態様の特殊性の理解に正当性があり、給与水準として現在適当かどうかは横に置いて教職調整額という本俸的給与で措置するという手法もありだとするならば、学校の管理下において、すなわち学校が責任を取る体制の下に(国賠法が適用される形態でもって)行われる部活動の指導業務は、校長が命じて行わせようが、教員個々による任意の自発的行為として行われると考えることにしようが、従事した以上は教員が自らの職務を遂行した、すなわち、勤務したと評価すべきものだと考える。その上で、給与問題としては、部活動指導業務に従事した教員に対する処遇はどうあるべきか、手当の水準をどのように設定すべきなのかを考えればよいのではないか。一方、そうした部活動指導業務が過度にわたり、健康被害が生じることのないように歯止めかけるには、そしてその歯止めの実効性を確保するにはどうすればよいのかを給与問題とは別に考えるべきではないのか。

 小川教授は、「給特法のロジックと学校現場における教員の業務実態の間には大きな断裂が存在しており、その断裂が教員の長時間の時間外労働を生み出している原因となっている。」と主張される。
 小川教授が指摘されるとおり、「大きな断裂が存在」しているのだろう。しかし、「その断裂が教員の長時間の時間外労働を生み出している原因となっている」という認識は全面的には支持できない。むしろ、その大きな断裂を生み出した根本原因、すなわち教員に担わされている増大しつづける膨大な業務量、にもかかわらず「子どものため」として自ら進んで、あるいは暗黙の圧力のような文化の中で、我が身を削ってまで業務に従事する、あるいはせざるを得ない労働慣行、それを容認し、あるいは教員であれば当然であるかのごとく求める我が国の国民文化、それを支持する日本的雇用慣行と日本人の共同意識ともいうべきものが、教員の長時間の時間外労働を生み出している根本原因なのだと理解すべきではないのだろうか。

 「その断裂を埋める有効な手立てが提案できないのであれば、給特法を廃止して労基法の原則と仕組みの下で教員の労働時間管理の適正化を図っていく方が有益である。」と小川教授は続ける。
そして、時間外勤務手当支給に移行する場合の懸念や心配を述べるのである。「…、あるいは、教育活動の質にどのような影響を及ぼすのかなどの検証も不可欠となるであろうことは付しておきたい。」と結んでいる。

 私立学校や国立学校においては既に超過勤務手当制度の下にある。その実態を調査し、小川教授の懸念や心配に応えられるような検証を文部科学省は実施すべきだと思う。しかし、文部科学省は手を出さないのだろうな…。その後、どうするの、と問われるから…。
 しかし、教員の勤務の在り方や教員の勤務時間管理・時間外労働規制の在り方は、教育の在り方そのものの問題に帰着する側面がある。難しい問題だと思う。
 ただ、ハッキリしていることは、超過勤務手当制度への移行だけではだめだろうということである。一つは、物理的な上限規制がなければダメということ。二つは、上限規制を担保する仕組みを公務員にも導入しないとダメということ。
 しかしである。一方で、教員一人当たりの業務量を人間らしく働き生活できる量に減らすためのあらゆる対策の実行が一番大切なのではないか。


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452. 中学教諭の6割、過労死ライン [8.トピック]

 4月28日、文部科学省は小中学校教員の長時間勤務が悪化している現状を示す調査結果を公表し、各紙が大々的に報道した。
 例えば、読売新聞「YOMIURI ONLINE」から。

中学教諭の6割、過労死ライン…勤務11時間超
 文部科学省は28日、公立小中学校の教員を対象にした2016年度の勤務実態の調査結果を発表した。
 教諭の平日の勤務時間は、06年度の前回調査より30~40分長い11時間以上となり、小学校教諭の34%、中学校教諭の58%が、厚生労働省の「過労死ライン」に該当した。中学では教諭が土日の部活動にかける時間が倍増した。松野文科相は同日の閣議後記者会見で「看過できない大変深刻な事態」とし、文科相の諮問機関の中央教育審議会で「教員の働き方改革」の方策を議論してもらう考えを明らかにした。
 調査は昨年10~11月、全国の公立小中学校の校長、副校長・教頭、教諭ら約2万人から連続7日間の勤務状況を聞いた。
 平日の平均勤務時間は、小学教諭が前回より43分長い11時間15分、中学教諭は32分長い11時間32分だった。
(2017年04月28日 11時40分)

 その他の各紙の大見出しを拾ってみる。
 共同通信=「中学校教諭57%過労死ライン 小学校は33%」、「超過密労働、教員悲鳴」、「「子のため」精神論限界」、「小学校英語/アクティブラーニング…現場に”宿題”教員重荷」、「部活動が勤務時間押し上げ 中学教諭、土日で倍増」
 朝日新聞=「過重な業務 教員悲鳴」、「中学の6割「過労死ライン」超え」、「授業増・部活「休みない」」、「増員や残業規制 検討を」
 読売新聞=「中学教諭58%過労死ライン 勤務平均 平日11時間超」、「脱ゆとりで授業増」、「「4か月で休み3日」部活顧問 過酷な勤務」、「「脱ゆとり」教諭に負担」、「多くが過労死ライン」、「授業準備や保護者対応…「どれも大切」」
 毎日新聞=「「休み月1ずっと忙しい」、「朝6時出勤、帰宅は夜8時」
 産経新聞=「教員「仕事際限ない」」、「過重労働調査 月の休み3日」
 日経新聞=「超勤週60時間超57%」、「中学教諭、部活の指導長く」、「教員の負担減急務」

 この間の教育改革や新法制定に伴う業務が増大する中で、学校現場の実感として「確実に超勤が増えている」との声を聞いていたのだが、それが裏付けられた。教育の質を確保する上でも、教員が心身ともに健康で働ける環境を確保することが大事であり、教員の過酷な勤務実態の抜本的な改善が急務になっている。

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451. 残業規制、教員は? [8.トピック]

 2017年4月4日付けの「内外教育」誌の「取材メモから インサイド」欄に「残業規制、教員は?」と題した記事が掲載された。

◇残業規制、教員は?
 「教員の時間外労働に歯止めを」。政府の働き方改革実現会議が定めた残業時間の上限規制が注目される中、日教組などは教員特有の勤務、給与制度の見直しを求めている。公立学校教員の給与に関するいわゆる「給特法」は、職業としての教員の特性を考慮し、時間外手当を支給しない代わりに、給与月額の4%相当額を「教職調整額」として一律支給する仕組みを定めている。ただこの4%は、1966年の勤務実態調査に基づき算定したもので、残業に換算するとわずか月8時間分。松野博一文部科学相も「当時と今の学校現場の先生の働き方は大きく変化している」と実態に合っていないことを認めているが、初等中等教育局の幹部によると、見直しのハードルは高いという。
 かつて中央教育審議会で教職調整額にめりはりを付けることが検討されたが、「内閣法制局にばっさり切られた」ことがある。一方で、時間外手当を設けるとなると多額の財源が必要。「これまでは給特法を見直すより、教員定数を増やしたり、少人数学級を推進したりするといった環境改善を優先してきた。なかなか答えが出ない話だ」とぼやいていた。

 この「内外教育」誌の記事なのだが、タイトルは「残業規制、教員は?」となっているにもかかわらず、もっぱら「給特法」の見直し、とりわけ「教職調整額」の仕組みに注目したものとなっており、どうにも違和感がある。それで、「教員に対する残業規制についてはどうなのか…」と。

 それで、2017年2月27日付けで日本教職員組合が行った緊急の「政策提言」を見ておく。提言は、2016年12月公表の「教職員の働き方改革と労働時間の実態に関する調査」の結果を踏まえてのものだ。パンフレットから提言内容を抜粋する。

教職員の過重労働や超過勤務を解消するための15の緊急提言
子どもの笑顔あふれる学校づくりは教職員の「生活時間」の確保から~
◇学校現場のワークルールの在り方に関する提言
提言1 民間労働者について時間外労働の上限規制を法制化した際には、教員にも該当規程を適用すること!
提言2 長時間労働を生んでいる教員の勤務時間法制である「給特法」の見直しに関する中教審審議を再開すること!
提言3 「労働時間適正把握ガイドライン」(2017年1月20日厚労省策定)を直ちに実効化し、法令等に沿った勤務時間管理の適正化をはかること!
(以下の提言は、省略)

 見てのとおり、先程の「内外教育」誌の記事で欠落していた「時間外労働の上限規制の教員への適用」を提言の第1番目に掲げている。これである意味、納得した。「内外教育」誌の記事では見えてこなかったが、日教組は、残業規制に対する見解を示していたのである。
 この構図は、高度プロフェッショナル制度の導入に向けた法案に対して「残業代ゼロ」法案と称して批判する場合とよく似ている。問題は労働時間規制なのに、「残業代ゼロ」と称することで賃金問題に論点がずれるのである。「内外教育」誌の記事もこれと同じで、大事なことは教員の健康被害を防止するための時間外労働の上限規制が確実に働くのかどうかが問題なのに、教職調整額という賃金問題に論点がずれているのである。それが違和感の理由であった。賃金制度をどうするのかは、労働時間規制をどうするのかという問題には、理論的には直接関係ないはずである。そこに混乱がある。
 その意味から言うと、長時間労働の是正の観点からは、提言1の内容を提言することは理解できる。しかし、提言2は直接関係ないのかもしれない。「給特法の見直しに関する中教審審議を再開する」ことの意味が、時間外勤務手当制度の導入に向けた検討をするということであれば、割増賃金の導入によって時間外労働縮減のインセンティブは働くのかもしれないが、提言1の時間外労働の上限規制の導入とセットでなければ効果は薄いだろう。しかし、教員にも時間外勤務手当制度を導入するということになれば、これはもうその働き方が大きく変わらざるを得なくなることを覚悟しなければならないのではないだろうか。教職調整額制度の前提であるところの、教員の自発的、創造的な活動に期待するという教員の職務と勤務態様の特殊性を否定することになるからだ。もちろん、私立学校や国立学校の制度は理解している。しかし、である。これは極めて難しい問題を孕んでいるのではないか…。
 例えば、教育基本法の第9条は「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。」と規定している。また、教育公務員特例法の第21条は「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」と規定している。これらの法律の条文によって示されている教員の責務は、教職調整額制度が前提とする教員観と親和的だと思われるのだが、教員の勤務の在り方が変わるとなると、いったいどのように理解すればよいのか、などの疑問が生じる。

 いずれにしても、現実の教員の長時間労働の是正はまったなしである。制度をどのように構想すべきかについては色々意見があるだろうが、少なくとも、教員の健康被害を防止するための実効性ある規制が求められてしかるべきだと思う。


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450. 山下興家=「人事院月報」第22号 [49.「人事院月報」拾い読み]

 「人事院月報」第22号(昭和27年1月発行)のトップ記事は、人事官山下興家の『過去を顧みて 本年の歩むべき途を思う』と題した随想である。山下興家は、鉄道院を退官後、日本機械学会の会長となり、戦後、人事院設立とともに初代の人事官の一人となった人である。

 人事院が設立せられてからちょうど3年になる。その間いろいろな法律や人事院規則ができたが、結局それはおおむね皆基礎工事に過ぎない。今年はその基礎の上に新しい家を建設するのだという感じがする。しかるに世間にはその基礎だけを見て、大き過ぎるとか、国情に合わないとか、なかなかやかましい議論をする人がある。われわれから見れば、建設される予定の建造物は何の目的を持ち、またどのようなものであるかを知らないで、ただいたずらに議論されているようにしか見えない。…(1頁)

 当時は、辻清明が述べた対天皇官紀から対民衆官紀への転換が求められた時代、すなわち、民主化が求められた時代であった。

 民主化という言葉は全くはやりものになって至るところで使われている。しかし民主化の意味がハッキリ理解されているのであろうか。はなはだ疑わしいと思う。民主化の名の下にワガママ放題のことをして、上の命令を無視したり、また下のもののワガママを通さして、規律を厳格に実行し得なかったりする場合が少なくない。
 公務員の場合でも、口には国民の公僕だと称しながらその意味を理解しないでただ単に少しばかり腰を低くすればよいくらいに、安価に考えているものが少なくないようである。(1頁)

 人事官たる山下興家の嘆きは大きい。

 かつては天皇の忠僕として人民を指揮監督した官吏が、新憲法によって180度の転換をして国民の公僕となったのであるから、公務員の身分はここに180度の転換をすることが、わが国の民主化には何よりも急務であって、これなくしては新憲法の根本精神である民主化はただ単なる空念仏に終ることは疑う余地がない。
 特殊な学校の卒業生とか、あるいはまた高文の合格者が行政の上層部を独占して、その他の人々から昇進の機会を奪うような封建制度は一日も早く排除して、一切の公務員をその能力に応じて公平に昇進さす、すなわち機会均等な制度に切り替えるべきであって、これこそ真の意味における民主化である。
 俸給でも旧憲法の下においては天皇から与えられるものであったが、新憲法の下では公務員は国民の公僕として国民全体に奉仕するのであるから、納税者たる国民がその奉仕に報いるために支払うものがすなわち俸給である。それで俸給は奉仕の量に比例すべきものであって、公務員がどこの学校をかつで出たというったような過去の経歴に対して支払わるべきものではないのである。従来のごとく学校の経歴が一生を支配するようでは、家庭の事情などで立派な学校を出ることができなかった者は、世の中に出てから後どんなに勉強しても、またどんなに頭がよくても、昇進の途が断たれることとなって奮励努力する勇気が無くなってしまうこととなる。努力すればどこまでも進むことができるという希望があってこそ、それが各人の努力、それが各人の努力の源泉となるものであるにもかかわらず、この妙味が失われれば人々から希望を奪い去る結果となって、その人々にとってはもちろんであるが、国家としても計り知ることのできない大きな損失である。
すなわち民主化は人道上必要であると同時に国家全体の活動の源泉ともなり、広い意味での国民の能率増進となるのである。(1~2頁)

 戦前、国鉄の工場管理のトップとしてマネジメント力を発揮し、諸外国からも注目される成果を挙げた山下興家の根本理念が最後の段落に端的に示されている。
 この後、職階制の現過程、給与準則、新任用制度、終身職について、人事院での作業の状況報告も兼ねて山下の考えが述べられていく。

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449. 地公法及び自治法の改正案(その4) [46.臨時・非常勤教員]

 「地公法及び自治法の改正案(その2)」において、今回の地公法改正では臨時的任用厳格化を求めるものとなっており、国と同様に「常勤職員に欠員を生じた場合」に限定し、それ以外の場合を認めない改正内容となっていることとかかわって、次のように述べた。

「ということは、もし、現在、各都道府県で臨時的に任用されている常勤講師の中に「常勤職員に欠員を生じた場合」に該当しない者がいるとするならば、都道府県費負担にならないという事態になりそうな気がする…。」

 このことにかかわって、平成29年3月号の「地方公務員月報」に次のような記述が掲載された。「「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書」に対する各地方公共団体からの意見等について」と題した記事中である。

「さらに、以下の三点について、地方公共団体から寄せられた質問に対し考え方を整理し、示しています。
 (略)
 第三に、「臨時的任用職員」についてです。
 改正法案では、フルタイムに限定するという趣旨から「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」という要件を付加していますが、これにより、臨時的任用が代替職員への対応に限られるということではなく、従来どおり、臨時に発生した業務等に臨時的任用職員を充てることができることを明示しています(ただし、臨時的任用については、パートタイムの任用はできません。)」

 以下に添付されている関係資料の13頁にも同趣旨の記述がある。

「 以上により、今回の改正でパートタイムの任用が制限され、フルタイムのみとなるものの、任用が可能な場合は、これまでどおり上記①から③までの場合(編注=①:緊急の場合、②:臨時の職に関する場合、③:採用候補者名簿や昇任候補者名簿がない場合)に変更はない。従って、臨時に発生した業務に対して臨時的任用職員を充てることは従来どおり認められるものである。」

 なんだ、従来どおりか…。どういう風に読めば「従来どおり」なのか、よく分からないのだが、都道府県負担にならないかもしれない…とか、心配することもないのかもしれない。

 ちなみに、分かる範囲で国家公務員の臨時的任用について確認しておきたい。
 まず、手始めに、人事院規則8-12(職員の任免)から、臨時的任用に係る規定を見ておく。

●人事院規則8-12(職員の任免)
(臨時的任用)
第三十九条 任命権者は、常勤官職に欠員を生じた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、現に職員でない者を臨時的に任用することができる。この場合において、第一号又は第二号に該当するときは、法第六十条第一項前段の人事院の承認があったものとみなす。
一 当該官職に採用、昇任、降任、転任又は配置換の方法により職員を任命するまでの間欠員にしておくことができない緊急の場合
二 当該官職が臨時的任用を行う日から一年に満たない期間内に廃止されることが予想される臨時のものである場合
三 当該官職に係る名簿がない場合又は当該官職に係る名簿において、当該官職を志望すると認められる採用候補者が五人に満たない場合

○運用通知(平21.3.18人企532)
第39条関係
2 この条の第1項第1号に該当する場合には、例えば、事故、災害等により突発的に生じた欠員を緊急に補充する必要がある場合で、採用、昇任、降任、転任、配置換又は併任の方法による補充が直ちには行えない客観的な事情があるときが含まれる。
3 この条の第1項第2号に該当する場合には、例えば、勤務時間法第20条に規定する介護休暇(1日を単位とするものに限る。)又は人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第6号若しくは第7号に規定する特別休暇(編注=産前・産後休暇)の承認を受けた職員の業務を処理することを職務とする官職で当該承認に係る期間を限度として置かれる臨時のものに臨時的任用を行う場合が含まれる。

 では、休職の場合は認められるのだろうか。
 この点について、手元にある逐条国家公務員法では詳しく書かれていなかったので、逐条地方公務員法を見た。臨時的任用に係る解説では特に注目すべき記述は見当たらなかったが、正式任用に係る第17条の解説に参考となる記述があった。(橋本勇「新版逐条地方公務員法第3次改訂版」)

「次に、任命が重複した場合が問題となる。本来、任命は欠員がある場合に行われるものであるから、任命が重複することはあり得ないのであるが、休職中の課長のポストに他の職員を任命する場合、あるいは分限免職が行われ、そのポストに他の職員が任命された後に当該免職の取消しが行われたような場合には重複任用の問題が生じる。前者については、国家公務員の場合は、休職者はその職を保有するものとしながら他の職員をその職に充てることはさしつかえないものとされており(人事院規則一一-四(職員の身分保障)四12)、制度的に重複任用が認められている。後者の場合は、やはり重複任用となるが、すみやかにいずれかの職員を配置換えすることにより、運用上解決すべきものである。」(247~248頁)

 補充の方法としては、正規職員を充てても、臨時的任用職員を充てても差し支えないと思われる。
 人事院規則11-4(職員の身分保障)の規定を確認しておく。

●人事院規則11-4(職員の身分保障)
(休職中の職員等の保有する官職)
第四条 休職中の職員は、休職にされた時占めていた官職又は休職中に異動した官職を保有するものとする。ただし、併任に係る官職については、この限りでない。
2 前項の規定は、当該官職を他の職員をもつて補充することを妨げるものではない。
3 第一項本文及び前項の規定は、専従休職者の保有する官職について準用する。

 休職の場合と同様に「当該官職を他の職員をもつて補充することを妨げるものではない。」とする例を拾ってみたら、国際機関等への派遣の場合(人事院規則18-0(職員の国際機関等への派遣)第5条第2項)、自己啓発等休業の場合(人事院規則25-0(職員の自己啓発等休業)第8条第2項)も同様の規定があった。
 個別の法律に基づく臨時的任用は、育児休業の場合(国家公務員育児休業法第7条第1項、地方公務員育児休業法第6条第1項)及び配偶者同行休業(国家公務員配偶者同行休業法第7条第1項、地方公務員法第26条の6第7項)がある。

 これら以外の場合については確認できなかったのだが、問題は、これら以外の場合について現に臨時的任用を行っている場合、果たして認められるのかどうかということになる。はじめに引用した「地方公務員月報」の記事では、「従来どおり、臨時に発生した業務等に臨時的任用職員を充てることができる」としており、そのとおりであることを今は期待したい。


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448. 働き方改革実行計画の決定 [8.トピック]

 3月28日、政府は「働き方改革実現会議」(議長・安倍首相)を開催し、同一労働同一賃金の実現や時間外労働への罰則付き上限規制の導入などを柱とした「働き方改革実行計画」をまとめた。政府は、秋の臨時国会に関連法案を提出し、2019年度からの施行を目指す方針とのことらしい。
 長時間労働の是正に関する労働基準法の改正の方向性については、連合と経団連による労使合意を踏まえた案が盛り込まれており、原則として、月45時間、かつ、年360時間として罰則を課し、特例として労使協定を結ぶ場合でも上回ることができない上限を年720時間(月平均60時間)とした上で、繁忙期でも、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないなどの上限規制を導入する。
 気になるのは、この罰則付き時間外労働の上限規制の導入が公立学校の教員にどのような影響を及ぼすのかということだ。
 本文から関係部分を拾い読みしてみる。

4.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
(略)
(法改正の方向性)
 現行の時間外労働の規制では、いわゆる36協定で定める時間外労働の限度を厚生労働大臣の限度基準告示で定めている。ここでは、36協定で締結できる時間外労働の上限を、原則、月45 時間以内、かつ年360 時間以内と定めているが、罰則等による強制力がない上、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して特別条項を設けることで、上限無く時間外労働が可能となっている。
 今回の法改正は、まさに、現行の限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるとともに、従来、上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定するものである。
すなわち、現行の告示を厳しくして、かつ、法律により強制力を持たせたものであり、厳しいものとなっている。(12~13頁)

 つまり、いわゆる「36協定」を前提とした仕組みになっている。ということは、給特法に基づき教職調整額制度が適用される結果、労基法36条の適用が空振りとなっている公立義務教育諸学校に勤務している教員には、政府で議論されている罰則付き時間外労働の上限規制についても、おそらく空振りとなるのではと思われる。公立学校の教員の時間外勤務については、限定4項目を除いて、命じることはできない制度となっており、この考え方を前提とする限り、今回決定された実行計画に基づき労基法が改正されたとしても、適用の余地がないように思われるのである。
 公務員や教員について、何も言及がないのか…、と思って読み進めていくと、本文中には何ら記述はなかったが、ロードマップの中に見つかった。(40頁)

項目3.長時間労働の是正
④ 法改正による時間外動労の上限規制の導入(その5)
(略)
【具体的な施策】
(公務員等の長時間労働対策)
• 国家公務員については、民間の制度改正を踏まえ、適切な公務運営の確保に配慮しつつ、より実効性ある対策を検討する。また、超過勤務を縮減する前提として、超過勤務を実施する際に、その理由・見込み時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理を更に徹底する。さらに、年次休暇の取得促進に向けた取組を徹底する。
• 地方公務員については、時間外勤務縮減に係る先進的事例の積極的な収集・提供のほか、各地方公共団体が抱える課題の解決に資する意見交換の場の設置等を通じ、各団体の取組を支援する。
• 教員については、各教育委員会による学校現場の業務改善の取組を加速するための実践研究事業の実施や、運動部活動に関するガイドラインの策定・部活動指導員の活用を通じた部活動の適正化を行う。さらに、教員の働き方・業務の在り方等についての教育再生実行会議における検討を踏まえ、長時間労働を是正する。

 まあ、教員に関する記述については、現在の文部科学省の動きがそのまま書かれており、びっくりする内容ではない。具体的な年次の工程を見ると、教員については、2017年度に「教育再生実行会議において検討・提言」とあり、2018~2021年度に「教員の長時間勤務是正の取組を推進」とあり、2022年以降は「実施状況を踏まえて見直しを行いつつ、必要に応じて更なる取組の検討、実施」となっている。とりあえずは、教育再生実行会議での検討内容を注視しなければならないということになる。

 さあ、これから本当に教員の長時間労働の是正が進むのだろうか。しかし、いずれにしても、現時点では教職調整額制度の見直しについては検討の俎上に上っていないようである…。


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447. 地公法及び自治法の改正案(その3) [46.臨時・非常勤教員]

 フルタイムの会計年度任用職員に対しては、給料を支給しなければならず、そして、手当を支給することができることになる。しかも、自治法上は正式任用の常勤の職員と同様、何の限定もないから、地公法上の諸原則、平等取扱い原則をはじめ、情勢適応の原則、均衡の原則、職務給の原則を踏まえて条例で定めることになるはずである。

 この点、モデルになったと思われる国の期間業務職員に対する給与の現状はどうなっているのか。

 遠回りになるが、前提として、期間業務職員の法令上の位置づけを確認しておかなければならないだろう。
 人事院が公表している「期間業務職員制度の概要」を見てみる。

1.定義
 相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職であって、1会計年度内に限って臨時的に置かれるもの(短時間勤務の官職その他人事院が定める官職(注)を除く。)に就けるために任用される職員
 (注)「人事院が定める官職」とは、その官職を占める職員の1週間当たりの勤務時間が、勤務時間法第5条第1項に規定する勤務時間の4分の3を超えない時間であるものである。

 定義は分かったが、このほかに、採用、任期、条件付採用期間、人事異動通知書、施行期日等は記載されているが、給与についての記載がない。
 期間業務職員は、国家公務員法第2条の規定を確認したが、特別職として掲げられていないので、一般職で間違いないだろう。
 期間業務職員の任免については、人事院規則八―一二(職員の任免)の第46条から第49条(非常勤職員の特例)が適用される。「期間業務職員」という用語も使用されている。第4条第13号に先ほど概要から引用した定義規定もある。

 さて、一般職ということなので、いわゆる一般職給与法の規定を確認する。

○一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)
(非常勤職員の給与)
第二十二条 (略)
2 前項に定める職員以外の常勤を要しない職員については、各庁の長は、常勤の職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で、給与を支給する。

 各省庁が決める給与を支給することになっている。ここで、人事院のガイドラインがでてくる。このガイドラインは、格差社会の解消が問題となる中、人事院が実施した調査によって、非常勤職員の給与について、同じ職務内容にありながら官署の違いにより差があることが判明したことから、平成20年8月に人事院総裁名で発出された。

○一般職の職員の給与に関する法律第22条第2項の非常勤職員に対する給与について(平成20年8月26日付け給実甲第1064号)
 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第22条第2項の非常勤職員に対する給与の支給について、下記のとおり指針を定めたので、これを踏まえて給与の適正な支給に努めてください。
 なお、これに伴い、給実甲第83号(非常勤職員に対する6月及び12月における給与の取扱いについて)は廃止します。

1 基本となる給与を、当該非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級(当該職務の級が2以上ある場合にあっては、それらのうち最下位の職務の級)の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容、在勤する地域及び職務経験等の要素を考慮して決定し、支給すること。
2 通勤手当に相当する給与を支給すること。
3 相当長期にわたって勤務する非常勤職員に対しては、期末手当に相当する給与を、勤務期間等を考慮の上支給するよう努めること。
4 各庁の長は、非常勤職員の給与に関し、前3項の規定の趣旨に沿った規程を整備すること。

 人事院のガイドラインは分かった。「常勤の職員の給与との権衡を考慮」という給与法に示された考え方を踏まえたものとなっているが、手当については、通勤手当及び期末手当以外の手当についての言及がない。

 平成28年9月、内閣官房内閣人事局が「国家公務員の非常勤職員に関する実態調査について(調査結果)」を公表している。
 この調査の対象となる職員は、平成28年4月1日時点で各府省に在籍する国家公務員の非常勤職員のうち、全ての期間業務職員と期間業務職員のうち、委員顧問参与等職員、任命期間が3か月以内の非常勤職員、勤務日数が少ない非常勤職員及び無休の非常勤職員以外の者である。
 長くなるが、給与関係の調査結果を全文引用しておく。

4 手当等
(1)「基本となる給与を決める際の考慮要素」(複数回答)
基本となる給与を決める際の考慮要素については、「職務内容」54,938人(98%)、「在勤する地域」53,904人(96%)、「職務経験(民間企業等における経験)」42,572人(76%)、「職務経験(非常勤職員としての勤務実績等)」38,314人(68%)、「学歴」18,007人(32%)、「責任の程度」3,958人(7%)、「同種の民間賃金」3,856人(7%)、「転勤の有無」41人(0.1%)、「その他」1,372人(2%)だった。
なお、考慮要素が複数ある場合もあるため、重複計上されている。
(2)「基本となる給与の上限」
基本となる給与に上限があるのは、55,861人(99.7%)だった。
(3)「期末手当に相当する給与の支給」
期末手当に相当する給与の支給については、一週間の勤務時間が常勤職員と同じ38時間45分の期間業務職員11,807人のうち、期末手当に相当する給与を支給する予定の職員は11,497人(97%)、一週間の勤務時間が常勤職員の3/4超38時間45分未満の期間業務職員18,622人のうち、期末手当に相当する給与を支給する予定の職員は2,080人(11%)、期間業務職員以外の非常勤職員25,590人のうち、期末手当に相当する給与を支給する予定の職員は2,200人(9%)だった。
また、期末手当に相当する給与を支給する基準については、勤務期間を基準とするもの6,307人(6月以上1年以内5,577人、6月未満730人)(11%)、特定の日に在職することを基準とするもの7,098人(13%)、その他の基準によるもの2,372人(4%)だった。
(4)「勤勉手当に相当する給与の支給」
勤勉手当に相当する給与の支給については、一週間の勤務時間が常勤職員と同じ38時間45分の期間業務職員11,807人のうち、勤勉手当に相当する給与を支給する予定の職員は9,166人(78%)、一週間の勤務時間が常勤職員の3/4超38時間45分未満の期間業務職員18,622人のうち、勤勉手当に相当する給与を支給する予定の職員は781人(4%)、期間業務職員以外の非常勤職員25,590人のうち、勤勉手当に相当する給与を支給する予定の職員は1,752人(7%)であった。
また、勤勉手当に相当する給与を支給する基準については、勤務期間を基準とするもの3,619人(6月以上1年以内3,443人、6月未満176人)(6%)、特定の日に在職することを基準とするもの6,319人(11%)、その他の基準によるもの1,761人(3%)だった。
(5)「通勤手当に相当する給与の支給」
通勤手当に相当する給与の支給については、当該給与の支給対象となる非常勤職員(※)には全員(54,240人)に支給予定であった。
※ 徒歩2km圏内に住んでいる場合等には、常勤職員と同様に通勤手当に相当する給与の支給対象外となる。
(6)「超過勤務手当に相当する給与の支給」
超過勤務手当に相当する給与の支給については、超過勤務が想定されていない非常勤職員を除き、全員(44,567人)に支給予定であった。
(7)「退職手当の支給」
退職手当の支給については、国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)が適用される非常勤職員(※)には全員(11,714人)に支給予定であった。
※ 国家公務員退職手当法が適用されるのは、常勤職員について定められている勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が引き続いて6月を超える等の要件を満たした者である。
(8)「給与法改正に伴う対応」
給与を引き上げる旨の「一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)」等の改正が行われた場合、非常勤職員の基本となる給与や期末手当に相当する給与等の対応(想定)については、「公布後の翌月から改定」10,617人(19%)、「次年度4月から改定」6,988人(12%)、「その他の時期に改定」6,447人(12%)、「4月に遡及して改定」2,796人(5%)、「給与の種類により改定する時期は異なる」1,283人(2%)、「改定なし」27,888人(50%)だった。

 期間業務職員は、日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態を見直して設けられた制度であった。予算の制約もあり、一気に正規任用の職員のようにはいかないのだろう。
 この調査結果では、割合の数値にばかり目がいくのだが、例えば、日々雇用であった頃の日給扱いはどうなっているのか、その他の手当の支給状況はどうか、といったことまでは分からない。そこで、各省庁のッホームページから、期間業務職員を募集する要項で給与に関する記述を拾い読みしてみた。ざっとした印象でしかないが、基本給たる給与については、月給ではなく日給(給与日額)であった。しかも、給与に上下の幅がないものが大半であると思われる。手当に至っては、ほとんどが通勤手当と期末手当の支給のみであった。目についたところでは、環境省では、期間業務職員の給与について、「日給8,100円~9,580円(学歴・職歴等を考慮の上決定) その他 賞与、通勤手当、住居手当、扶養手当、超過勤務手当支給(当方規定による)、退職手当(国家公務員退職手当法の規定による)」としている。

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