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461. 学校における働き方改革特別部会中間まとめ [8.トピック]

 12月12日、学校における働き方改革特別部会(第9回)が開催され、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」が取りまとめられた。
 前々回(459.「学校が壊れる」週間東洋経済)で取り上げたのは11月28日の第8回に示されたもので、修正が行われている。
 学習ノートの関心は、給特法と教職調整額についてなので、これにかかわる修正箇所を見てみた。

 5-(5)「公立学校の教師の時間外勤務の抑制に向けた制度的措置の検討」の記述のうち、教職調整額制度の見直しについての特別本部会において出された意見に1項目が追加されている。

○ 給特法の存在を以て直ちに教師の過重な労働が現出しているわけではないのではないか。給特法制定当時の立法事情や他の職種との比較も整理すべきである。

 そして、「このような意見を踏まえて,教師の勤務の特殊性や児童生徒の学びの質を担保するために持続可能な勤務環境の在り方も考慮しながら,給特法の在り方も含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方については,引き続き議論を進めていく必要がある。」とこの節を結ぶのである。

 特別部会において出された意見の1番目と2番目は、
○ 現行の給特法が,勤務時間管理を疎かにすることにつながっている点は否定できない。また,使用者側にとっての長時間勤務の抑制に対するインセンティブにつながっていない。
○ 時間外勤務手当には,割増賃金により,使用者側に対して長時間勤務を抑制させるという性格が含まれている。どのような形であれ,制度を見直す場合には,このような性格を組み込むべきではないか。

というものであり、言い換えれば、「実効性のある超勤の歯止めを仕組みとして制度化すべき」と言っている。
 一方、追加された意見は、給特法が長時間勤務の抑制に対するインセンティブにつながっていないことを否定はしていないが、給特法の存在、すなわち超過勤務手当制度の適用除外と教員の自主性・創造性に対する期待が直ちに教師の過重な労働の原因ではないと言う。労働における自由の度合い、裁量が許される度合いの高さが、直ちに過重労働につながっているのではなく、そのことの是非とは別の原因により、過重な労働環境を強いられているのではないか、と述べているように思う。
 これらの2つの立場の意見は、一方は、超勤手当制度の導入の方向をにおわせる意見であり、他方は、教職調整額制度を維持する方向の意見と思われる。今回の追加された意見は、今後の議論に影響する重要な意見であるような気がする。


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460. 「搾取される非正規教員」週間東洋経済 [8.トピック]

 週刊東洋経済の2017.9.16号の特集「学校が壊れる」では、続いて、「搾取される非正規教員」というショッキングな見出しで、非正規教員の実態を紹介している。そして、非正規教員の給与についても記事が書かれている。

 K県K市の公立小学校に勤務する41歳の教員は、臨時採用されて7年目。すべての期間で学級担任だった。勤務時間や勤務日数は正規の教員と同じ。任期は4月1日から翌年3月29日までだった。
 驚くのは収入だ。15年度の年間所得は約246万円。その教員は一人親で子どもが2人いる。K市の就学援助制度の認定基準は親子3人世帯で約262万円。正規教員と同じ業務をしているのに、就学援助を受けるほど低水準なのだ。
 この事例には非正規教員の抱える問題外凝縮されている。一つは給与に上限が設定されていることだ。K市の同年齢の正規教員は給料月額が標準で36万円、年齢を重ねるごとに上昇する。一方、この教員は同じ仕事内容なのに約22万円と4割も低く、上昇しない。
 K市に限らず、非正規教員の給料については多くの自治体が上限を設定している。非正規教員の実態を知る日教組の薄田綾子・中央執行委員によると「新卒から非正規教員を続けると、約10年で昇給が止まる」という。背景には「臨時」である非正規が長く働くと想定していなかったことがあるようだ。
 なお非正規教員には「臨時的任用教員(臨任)」と「非常勤講師」がある。前出のK市の教員は臨任に当たり、正規と同じ業務を行い、担任や部活動の顧問にもなる。基本的に授業のみを担当する非常勤講師は時給制で、夏休みなど授業がなければ給料はでない。

 従来、民間経歴等を有する者の初任給決定については、公務部内の長期勤続者を優遇する観点等から、いわゆる「初号制限」が設けられてきた。具体的には、民間経験等の採用前の前歴について一定のルールで号俸を加算するのだが、その際、上位の職務の級の初号の水準を上回らないこととする制限であった。この制限については、旧教(二)(三)には特例が認められており、旧教(二)については、1級は19号俸まで、2級は29号俸まで、旧教(三)については、1級は15号俸まで、2級は30号俸までの範囲内で初任給の号俸を決定することができることになっていたのである。(「教育職俸給表の適用を受ける職員の職務の級及び俸給月額の決定等について」(昭和39年12月28日給実乙第74号))
 この初号制限については、平成18年の給与構造改革の際に、有用な民間経験を持つ者の初任給を公務に直採用された者と同等に決定することが可能となるよう見直しされ、撤廃されたのだが、週刊東洋経済が紹介しているK市の上限の記事については、おそらく、従来の初号制限が撤廃されずに残っているということではないか。

 旧教(三)の上限であった1級15号俸は、給与構造改革後は1級53号俸に相当する。これは大卒直後に常勤講師になり、8年経験で到達する号俸である。つまり、給与構造改革前の11級制時代の旧5級(相困係長)の初号相当の号俸ということになる。平成27年4月適用の全人連モデルでは、224,700円(教職調整額を加算して233,688円、地域手当10%とすれば257,056円)である。
 ちなみに、大卒直後に正規教諭に採用され標準昇給して41歳ということは、経験19年となるので、2級の初任給=13号俸に4号×19年=76号俸を加算して2級89号俸となり、358,800円(教職調整額を加算すれば373,152円、地域手当を考慮すると10%で410,467円)になる。
概ね週刊東洋経済の記事内容と同じと考えてよいだろう。


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459. 「学校が壊れる」週間東洋経済 [8.トピック]

 旧聞に属するのだが、週刊東洋経済の2017.9.16号の特集は、「学校が壊れる」と題して、過労死ラインを超える残業が常態化する学校現場を取り上げている。
トップの記事は、「教員の異常な勤務実態 過労死ライン超えが続出」との見出しをつけて、4月に文科省が公表した教員勤務実態調査(速報値)を紹介している。続いて、「ブラック化する部活動 中学校の教員に重い負担」との見出しで、日本体育協会の調査を紹介しながら、部活動業務の実態を取り上げている。そして、「長時間活動すると最低賃金未満に」との記事がでてくる。

長時間活動すると最低賃金未満に
 部活動問題で深刻なのは、長時間労働の一因になったり、休みが取れなかったりすることだけではない。そもそも教員は「給特法」で残業代が出ないため、部活動の指導をしてもしなくても給料は同じだ。休日の活動には手当が出るが、その額は多くない。
たとえば東京都の場合、市区町村によって多少の違いはあるが平日の手当はなく、休日は4時間以上で4000円だ。ただ、活動が6時間でも8時間でも増えない。5時間部活動を指導したら、東京都の最低賃金932円を割り込んでしまう計算だ。学校外に練習試合に出掛けた場合の交通費もない。

 東京都では4000円だが、大半の県は、義務教育費国庫負担金の基準と同じ3000円だと思う。4時間で割れば750円、5時間で割れば600円となる。こういう計算をして最低賃金と比較すると「最低賃金未満だ」ということになる。
 以前にもこのノートで言及したが、部活動手当は特殊勤務手当である。おおざっぱに言えば、仕事の困難さや負担の重さに対して通常の給料だけでは少ないために上乗せする手当なのである。勤務時間外に当該業務に従事した場合には、時間外勤務手当が支給された上に該当の特殊勤務手当が支給されるのである。そうすると、上乗せ手当のみを最低賃金と比較するのは、制度上はおかしいということになる。

 しかし、である。部活動手当は教員特殊業務手当の一つなのだが、一般の特殊勤務手当とは大きくことなるところがある。一般の特殊勤務手当については、「◇◇手当は、◇◇職員が、◇◇業務に従事したときに支給する」と規定されているのだが、部活動手当を含む教員特殊業務手当については、「教諭等が、次に掲げる業務に従事した場合において、その業務が心身に著しい負担を与えると人事委員会が認める程度に及ぶときに支給する」となっている。具体的には、泊を伴うものや休日等に実施するものを対象とすることから、ほぼ時間外勤務をしたときに支給される手当となっている。一般の特殊勤務手当なら、勤務時間の内外は問わないのに、部活動手当などについては勤務時間内は支給せず、休日等の場合のみ支給することになっている。教員特殊業務手当については、給特法に基づく教職調整額とセットで設けられた経緯があるのだが、教員だけの特殊な取扱いになっているのである。

 6月、中教審に「働き方改革特別部会」が設置され、年内の緊急対策をとりまとめるべく、精力的に審議をしている。教員が担っている業務の役割分担と適正化を中心に議論してきたが、今後は、教員の勤務のあり方や処遇が議論されるようである。
 11月28日の特別部会に中間まとめの案が示された。気になる箇所を抜粋する。

「このような状況を踏まえ,文部科学省は,公立学校の教師の長時間勤務の改善に向け,業務の総量を削減するにあたり,勤務の特殊性にも留意しつつ,勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインを早急に検討して示すべきである。」と述べた上で、
「給特法の在り方及び1年単位の変形労働時間制の導入については,中教審も含め,過去に数次にわたり検討がなされてきたが,給与の問題に加え,学校の組織運営,教師の勤務時間管理,教師の時間外における勤務の在り方などにも大きく影響する問題であり,結論が出されていない。」として、平成20 年9月に公表された「審議のまとめ」(学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議)における教職調整額制度の見直しについての論点整理を紹介する。
 そして、「これまで本部会において出された意見は,以下のとおりである。」として意見を並べる。このノートが関心を寄せるのは次の意見である。

○ まずは今の業務の総量や長時間勤務を抑制し,その上で,教職調整額と実態とのかい離を埋めていく必要がある。
○ 人事委員会の活動に対して,労働基準監督署等の知見や経験を生かすような方法等は考えられないか。人事委員会と教育委員会との意見交換により,長時間勤務の是正に向けた実効性が表れる。

 そして、次のようにまとめる。
「このような意見を踏まえて,教師の勤務の特殊性も考慮しながら,給特法の在り方も含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方については,引き続き議論を進めていく必要がある。」

 これを読む限り、教職調整額を廃止して時間外勤務手当を支給するということにはならないようである。教職調整額はできれば増額し、一方、長時間労働の歯止めとなる実効ある制度を作れないかということらしい。さて、どのような議論が進んでいくのだろうか。


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458. 教(三)より教(二)の方が低い?(29年全人連モデル) [8.トピック]

 このところ、世の中の働き方改革に向けた動きとは逆行し、猛烈に忙しい日々が続いている。そうしたこともあって、このノートもサボっている。

 今年の全人連モデルは例年どおり作成された。見たところ、人事院勧告に基づく行(一)との均衡を踏まえて、作成している。
 行(一)については、大卒初任給を1,000円引き上げ、大卒制度年齢29歳までは同額を引き上げ、40歳以上の改定額を400円と置いて、その間をなだらかにつないでいる。
 全人連モデルの教(二)(三)は、大卒初任給を1,100円引き上げ、大卒制度年齢40歳以上の改定額を400円と置いて、あとは行(一)の改定率を見ながら改定額を出しているように思われる。

 ここまでは、ざっと見ていた。今頃になって気がついたのだが、今回の全人連モデルにはおかしな箇所がある。教(二)の俸給月額が、教(三)よりも低い号俸ができてしまったのである。
 2級について、それぞれ初任給基準の号俸の位地を合わせて単純に並べ、教(二)の俸給月額から教(三)の相当する俸給月額を引くとどうなるか。これまでは、経験年数15年までは両者は同額であったのでゼロになり、16年目から徐々に額が大きくなっていくようになっている。
 しかし、今回の改定でマイナスの箇所ができたのである。

 これまで、教(二)2級64号俸と教(三)2級76号俸は同額の337,500円であり、これらの号俸までは全くの同額であった。それが、教(二)2級59号俸から64号俸までは改定率0.2%で、改定額800円に対して、教(三)2級71号俸から76号俸までは改定率0.3%で、改定額900円となっていることから、前者の方がそれぞれ100円低くなっているのである。
 う~ん。これは、前代未聞。
 普通、教(二)と教(三)は水準こそ違えども、沿革的経緯を踏まえるならば、ちゃんと細かなところまで目を配って、バランスをとるべきものだろう。
 なぜなのか。教(二)は行(一)6級に合わせ、教(三)は行(一)5級に合わせたということか。それにしても、違うだろう?


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457. 黙示の残業命令 [8.トピック]

 2017年9月15日付けの「内外教育」誌の「教育法規あらかると」欄に「黙示の残業命令」と題した菱村幸彦氏の文章が掲載されている。抜粋する。

「では、その根拠という「黙示の残業命令」について、判例はどう判示しているのか。
根拠として挙げている判例は、2002年に愛知県下の中学校で勤務中に過労のため脳内出血で倒れた教員が、公務災害の認定が得られなかったのを不服として、災害補償基金を相手に提訴した公務外認定処分取消請求訴訟の判決を思われる。
 名古屋地裁判決(11年6月29日)は「勤務時間内に職務を終えられず、やむを得ずその職務を勤務時間外に遂行しなければならなかったときは、勤務時間外に職務を命ずる旨の個別的な指揮命令がなかったとしても、それが社会通念上必要と認められるものである限り、包括的な職務命令に基づいた勤務時間外の職務遂行と認められる」と判示した。この判決は名古屋高裁判決(12年10月26日)で是認され、最高裁も上告棄却(15年2月26日)したので、原判決が確定している。
 ただし、名古屋地裁判決は、公務災害認上の公務の判断基準を示したものであって、一般的な公務の判断基準を示したものではないことに留意する必要がある。つまり、同判決は、被災者救済の観点から、公務災害について残業命令を広く認定したものなのだ。」

 更に続けて次のように解説し、結論を述べる。

「この点について、別件の最高裁判決、校長の黙示の残業命令を否認している。2004年に京都市立小・中学校の教員らが、超勤4項目以外の時間外勤務を校長の黙示の残業命令によって強制されたとして、損害賠償を求める訴訟を起こした。京都地裁判決(08年4月23日)と大阪高裁判決(09年10月1日)は、教員の訴えを一部認めたが、最高裁判決(11年7月12日)は「校長は被上告人(教員)らに対して明示的に時間外勤務を命じていないことは明らかであるし、黙示的にも時間外勤務を命じたと認めることもできない」として請求を退けている。
 いずれにしても、部活動顧問を委嘱する校長の職務命令が、直ちに黙示の残業命令に該当し、超勤4項目に抵触して、違法であるというのは、法解釈として無理がある。」

 この解説を読んで、確かにそうなのだが、釈然としない。なぜか、それは、この結論がいわゆる給特法の存在を前提として、「給特法及び給与条例に違反して、時間外勤務を命じてはいない」という最高裁の判例を根拠としているからなのだろう。
 そこで、前記最高裁判例の該当部分をもう少し正確に抜粋する。

「前記事実関係によれば,本件期間中,被上告人らはいずれも勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していたが,勤務校における上司である各校長は,被上告人らに対して時間外勤務を命じたことはない上,被上告人らの授業の内容や進め方,学級の運営等を含めて個別の事柄について具体的な指示をしたこともなかったというのである。そうすると,勤務校の各校長が被上告人らに対して明示的に時間外勤務を命じてはいないことは明らかであるし,また,黙示的に時間外勤務を命じたと認めることもできず,他にこれを認めるに足りる事情もうかがわれない。
 したがって,勤務校の各校長は,本件期間中,教育職員に原則として時間外勤務をさせないものとしている給特法及び給与条例に違反して被上告人らに時間外勤務をさせたということはできないから,上記各校長の行為が,国家賠償法1条1項の適用上,給特法及び給与条例との関係で違法の評価を受けるものではない。」

 どうだろうか。これを読んで、菱村氏の結論になお疑問を持つのは、このノートぐらいだろうか。
この判決は、「…上司である各校長は,被上告人らに対して時間外勤務を命じたことはない上,…個別の事柄について具体的な指示をしたこともなかったというのである」との事実認定に基づいて、「給特法に違反して時間外勤務を命じてはいない」との結論になっている。菱村氏が述べるように、「部活動顧問を委嘱する校長の職務命令が、直ちに黙示の残業命令に該当し、超勤4項目に抵触して、違法であるというのは、法解釈として無理がある」のだとしても、例えば、勤務時間外にわたる部活動の練習を校長が黙認しており、あるいは、校長が認めて休日の対外試合への参加したような場合、常日頃から、安全管理のため顧問教員は必ず部活動に立ち会うよう指導していたような場合にまで、「個別の事柄について具体的な指示をしていない」との評価になるのだろうか、と思うのである。

 直接関係ないのかもしれないが、思い出したことがある。『教育職員の給与特別措置法解説』(第一法規、昭和46年)に収録されている当時の人事院総裁の答弁である。

 昭和46年5月7日、衆議院文教委員会。質問者、山原健二郎(社会党)
○佐藤(達)政府委員 私どもは、教員の勤務を総体的につかんでなじまないと申し上げておるのでありまして、これはいろいろな仕事にばらす意味では、たとえば職員会議をこれから一時間やろうではないかと言えば一時間という時間計測、これはなじむ面もあることはある。たとえば御指摘になった裁判所の判決は、たとえば調布の事件があります。これらの事件を見ますと、いまおことばにありましたように訴訟に勝った。勝ったのは、たとえば職員会議というのは時間計測になじむものである。全体がなじまないとは言い切れない。たとえば職員会議などのごときは、なじむものもあるという意味で判決には出ている。そして職員会議の分として超過勤務の支払いの判決が出ておる。しかし、これはひるがえって見ますと、大体いままでこの超勤訴訟でおかちとりになった金額というものは幾らお取りになっておるか、われわれはそこまで調べておる。
 ある例を申しますと、四月から十月までの間の超過勤務としておかちとりになったその額を調べてみますと、お一人当たり何と百何十円というものです。大体をならしてパーセンテージにしてみますと、○・四%にならない、○・三幾つ%。最近修学旅行の分が超過勤務を見られる判決がございますから、それらを入れて○・四%ですね、超勤手当としておかちとりになったもの。今度の場合われわれが提出を申し上げている調整額四%、これは実質六%。そのほかに、たとえば退職手当で平均二十五万円いままでよりふえる。これらに比べてみれば、いまの訴訟でおかちとりになった、訴訟による額なんというものは、これはほんとうにもう涙ぐましい額にすぎない。もっと大きく見れば、先ほど申しましたように時間計測にはなじまない。本来なじまないということから来て、超過勤務の手当にもなじまない。なじむものも片りんをつかまえればそれはないことはありませんけれども、それは決して学校の先生方のお得にはなりません。この一括の優遇措置のほうがよほどお得になります。われわれは確信を持っておりますから、それを大きな声で申し上げるわけであります。(112~113頁)

 この当時、全国一斉に超過勤務手当請求訴訟が提起され、大問題となっていた。同書の記述では、鳥取県の訴訟で、対外試合引率やクラブ活動が請求の対象たる超勤の態様として挙げられているが、判決要旨ではこれらが超勤手当の支給対象と認められたのかどうか判然としない。
いずれにしても。当時の佐藤総裁は、裁判で認められたのは0.4%程度だと述べている。つまり、実態として時間外勤務をしていたとしても、そのほとんどの時間外勤務について超過勤務手当の請求権が認められていなかったのである。しかも、教職調整額の根拠となった4%の算出に当たっては、以前もこのノートで指摘したが、当時の文部省はクラブ活動(部活動)を超過勤務の対象から外している節がある。

 こうしてみると、健康被害を防止するための勤務時間の把握対象としては部活動指導も含めて自主的・自発的な勤務も含まれると理解してよいのだが、一方、給特法下において明示的にも黙示的にも超過勤務を命じていないとされる限り、給特法違反ではないから、損害賠償請求権や超過勤務手当請求権は発生しない、ということになる。
 さらに、50年以上前の超過勤務手当請求訴訟における判決の考え方が現在も通用するのならば、給特法を廃止したとしても、超過勤務手当の請求権はほとんど認められない可能性が残り、したがって、歯止め効果も大幅に減殺されるということになってしまうのだが…。時代は変わっているのか、いないのか…。

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456. 俸給表の作成方法(続き) [49.「人事院月報」拾い読み]

 前回、人事院月報第29号(昭和27年8月号)を取り上げ、当時の俸給表の作成方法に関する記述を拾い読みした。その前年の勧告にかかわるものなのだが、たまたま、国会会議録で面白い記述を見つけた。当時の俸給表の作成にかかわって、当時の人事院給与局長である瀧本忠男の説明である。抜粋する。

第011回国会 人事委員会 第2号
 昭和二十六年九月二十五日(火曜日)

○説明員(瀧本忠男君) 人事院が先般いたしました勧告の内容につきまして少しく詳細に御説明いたして置きます。
 今回の勧告におきましては、いろいろ給与の体系上の問題もあるのでありますが、併し人事院は只今給与準則、即ち職階制に基きまする給与体系というものの準備を極力急いでおります。間に合えば臨時国会にも提出したいというような考えでこの準備を進めておるのでありますが従いまして多くの例題はその機会に譲りまして、今回の勧告におきましては、給与水準の引上げということと、又緊急止むを得ない二、三の点につきましてのみ勧告をいたす、こういうことに相成つた次第であります。即ち主な点はどういうところであるかと申しますると、この俸給表の額が、従来の八千円ベースというものに比べまして見かけ上では三割乃至五割程度上つたことになつておりまるが、即ち八月一日におきまして公務員一人平均一万一千二百六十三円、こういうふうな金額になるような俸給表の改訂を勧告いたすということであります。
 その次に今回は企業性を持つております官庁、例えば郵政省でありますとか電通省、又は造幣庁、印刷庁、それから通産のアルコール工場、こういうような企業的色彩の濃い現業に対しましては、その作業の特殊性に応ずるために特別俸給表というものを新たに新設いたそうと、併しこの問題は職階制に基きます給与準則のときに、抜本塞源的に解決するものでありまするから、今回勧告いたしましたこういつた企業的色彩を帯びる現業に対する特別俸給表というものは中途半端な感じであるというようなことが言えるかも知れません。これは給与準則のときにより一層合理化された形になるだろうというふうに思います。
 それから従来は年末手当というものが半カ月分支給されることになつております。併し民間の事業場等の定期的に支給されまする給与以外のいわゆる臨時の給与、俗にいう賞与といつたようなものでありますが、そういうものの支給状況を調べて見ますると、やはり相当出ておる。勿論民間の会社のことでありまするから、営業成績或いはそういつたことに応じましてお金の出ないところもありますが、おおむね出ておる。でその平均をとつて見ますると、一年につきまして定期的に支給される給与の一・四カ月分は出ておるという状況であるのであります。そういう事情がありまするし、一方におきまして年末或いはお盆といつたようなときに、これは我が国の国民慣習によりまして、非常に出費が多い、そういう生活上の慣習もあるわけでありまするから、両方を睨み合せまして、やはり公務員にもこの両方の時期におきまして何らかの手当が出るのが適当であるというような考えを持ちまして、今回はお盆並びに年末、即ち六月と十二月のしまいに特別手当を支給してもらいたいということを考えております。これはいろいろありまするが、まあ民間は一・四カ月分出ておりまするが、公務員の場合は両者を合しましてほぼ本俸、扶養手当、地域手当等の一月分、即ち六月末に出るのが〇・二カ月分、年末に出るのが〇・八カ月分ぐらいということをお願いした次第であります。扶養手当でありまするとか、特殊勤務地手当というようなものにつきましては、おおむね現行通りといたします。但し特殊勤務地手当につきましては、この給与べースの勧告或はこれに伴いまする法律案への意見の申出ということとかかわりなく或は関係いたすかも知れませんが、まあ研究中でございまするが、若干特殊勤務地手当につきましても、給与準則に移行いたします前に合理化を図りたい。本質的にはこの問題はやはり給与準則に繋がつておりまするので、給与準則のときにおおむね適正に特殊勤務地手当の処理ができるのでありまするが、若干はその前にいたしたいということを考えております。扶養手当につきましてはおおむね現行通り。それからこの勧告につきましては勤務地手当は本年五月十二日に勧告いたしました支給地域区分によるということに一応いたしております。併しながらこの勤務地手当が適正であつたかどうか、即ち地域によつて生活の著しく困難である地域に対しましては、地域給を支給する計画になつておりますが、そのために人事院は絶えず調査研究しなければならないということに法文上も明記してありまするから、人事院は絶えずこの調査、研究をいたして参つたのであります。でおおむねそういうものの資料を持合せておりまするので、目下そういうものの検計もいたしております。場合によりましては或は五月十七日に勧告いたしましたものを若干訂正するということになるかもわからないというふうに思つております。以上のようなものが主な点でございまするが、そのほかに奨励手当というものを制度化しよう。これは現在におきましても、例えば特殊勤務手当の中に奨励的なものが出ております。給与法によらない、給与法以外のものを別の法律等によりまして奨励手当的なものが出ておるものもあります。そういつたものを一応この給与法の枠の中へ入れまして、そして今後奨励手当というものを合理化して行く基礎を作りたい、こういうことで考えておる次第であります。
 まあ以上のごとく今回の勧告におきましては俸給表の額をおおむね三割乃至五割上げまして、平均給与水準といいますか、そういつたものを従来の八千円水準から一万千二百六十円程度にいたしたいというのが骨子であります。それに二、三の緊急止むを得ませんものを申出ると、こういうことになります。
 で問題の中心は俸給表でございまするが、俸給表の作成に当りましては、従来とても人事院は標準生計費という問題と、それから民間給与、この二つを基礎にいたしましてそして俸給表の作成をいたしておつたのであります。今回もその方法に変りはございません。標準生計費のごときは従前とおおむね同一の方法をとつております。ただ国民食糧需給計画というものが、昨年の七月から本年の六月までの間のものが従来のものに比べましてカロリー等も若干殖えております。従いましてこの標準生計費はカロリーが殖えて又価格も昨年よりは消費財の価格が上つておりまするからそういう意味におきましてこの標準生計費の額が違つて来ておるこういうことは申上げ得るのであります。税込で勤務地手当の附かない地域に成年単身男子、即ち十八歳程度で四千二百円ということにいたしたいというふうに考えております。
 民間給与調査につきましては従来よりも相当進歩いたした方法を採用いたした次第であります。どういう方法かと申しますると、従来は民間給与調査をやりましても、その中にただ一点、即ち十四級六号、通し号俸で申しますると七十号というようなところを一点だけ用いたのであります。そして標準生計費を二級三号に押えるということで、この両者を等比級数曲線によりまして結びまして、通し号俸の七十号というものを作り上げまして操作をいたしたのであります。この中で、折角やりました民間給与調査の中で、一点どこが違つておるかと言えば、等比級数曲線というものは民間の級別の給与の平均値の曲線を作つてみますとこれがおおむね等比級数曲線になりますので、そういう意味では違つている。併しポイントとしては十四級六号、而も十四級六号と申しますれば外局の長官が四、五年勤め上げておりまして、そして初めて到達し得られるようなところで実際にはそういうポジシヨンには人がいないというようなことになつておるのでございます。まあそういうようなところを押えておつた。言い換えればこれはまあ計算方法でそういう方法をとつたのでありまするが若干上のほうを押え気味であつたということが言い得るのではないか、これは批評する人によつて違うでありましようが、そういう見方もでき得ると考えております。今回はそういう方法をとりませんで、公務員の場合と同様の職務内容並びに責任の程度を有しまする、即ち公務員の場合職務の級、一級、二級、三級、そういう級別に民間において同様の職務内容並びに責任の程度を有する職員の給与というものは一体どういうふうになつておるかということを調べまして、そういうものの平均値を作つたのであります。従つてその平均値を結んで、それを数学的に補正をいたして参るということになりますればそういう線こそむしろ民間の給与に非常にマツチしておるものであるということが言えるんではないかというふうに思うわけであります。今回はそういうふうにいたしまして、各級別の平均値を補正いたしたものを根幹として使うことにいたしました。ただそれでは通し号俸の各号俸がすぐ出て参りません。この各級の平均的なものをどこに押えたかと申しますと、それは現在の一般俸給表の各級の俸給の幅がありますが、そのおおむね真中辺に押えます。そうするとそれが通し号俸で何号であるかということがこれはおのずからわかるわけであります。そういうふうにいたしまして各級の通し号俸が何号であるかということを見まして、そうしてその間の格差が幾つあるかということからその間を割つて行つたわけであります。尤もこれは何十何円という端数が出ましては取扱いも困難でありますから、そこをラウンド・ナンバーにいたしまして、全体の通し号俸を作る。こういうふうにいたしまして作りました。ただ一級、二級の辺になつて参りますと民間給与のほうは我々の使つております標準生計費を下廻るのであります。併しながらこれを下廻らしては人事院の従来の給与の作り方に反しますので、標準生計費は確保する。これは現在公務員の二級の平均年齢を求めて参りますと十八・六歳ということになるのであります。ところで二級の中心は幾つかと申しますると、二級四号であります。二級四号では十八・六となるのでありますから、十八歳というのはそれよりも少し下ではないかというので、二級三号というふうに押えました。従つて二級三号を四千二百円、いうような方法をとりまして、この民間の給与調査から得ました曲線を少しく補正して下のほうを上げてあるのであります。そういうふうにいたしまして作り上げたものが今回の俸給表の基礎になつておる数字である。こういうふうにお考え願いたいのであります。
 なお民間給与調査をやるにつきまして従来は百人以上の事業場を用いました。併しながら今回は五十人程度に下げております。この点もいささか問題になる点であろうかと思いますが、併しながらこれを押えたということは、これは成るべく多くの事業場を採用したいというのが趣旨であります。特に東京或いは大阪、大都市の周辺にありましてはなかなか大きな工場というものは少い。五十人くらい従業員のおります事業場というものは相当大きな工場であります。又組織ができております。こういうところを問題にしないというのも一応どうかというふうに考えまして、五十人というふうに考えたのであります。勿論我々が公務員の職務の級と同等であるということを比較いたしますにつきましては、やはりその職務内容、責任の程度ということを重視しておりますから、必ずしも五十人の事業場と、或いは千人或いはそれ以上の事業場というものと同等に扱つたということにならないのであります。それはやはり規模の程度によりまして、責任の程度もおのずから違うというような観点から、公務員の責任或いは職務内容でも合わすようにとつておりますから、小さい事業場をとつたら全体の平均が低くなつておるのではないかというこういうような大雑把な懸念はないのじやないか、殊に今回やりました我々の民間給与調査というものは、勿論人事院でやります作業でありまして、従いましてこれに従事する人間というものは数が限られております。相当高度の調査でありますから、誰にでもやらすわけに行かないということでございます。又結果を早くまとめなければならないという意味からも大きな調査をやることができない。国勢調査のように結果が一年あとに出てもよいというものではありません。従つてこれは規模が限られておるということになるのであります。併しながらこの限られたこの予算並に人員の範囲、又この集計の期間の範囲で我々が如何にしたらより一般的な情報を正確な正確といつても限度があります。その誤差の範囲というものをちやんときめましてその範囲におきまして立派な調査が得られるかということにつきまして非常に研究いたしたのであります。近来アメリカにおきましては集計学というものが非常に発達しておりまして、いわゆる無作為抽出法というものを用いまして、この調査の結果というものを非常にはつきりさせる、一定の規模でやりましても、その対象等の選択に相当の注意を払いました結果、それが高度の信頼性があるというような方法によつてやつておるのであります。最近におきまして人事院でやりました民間給与調査、これはちよつと余談になるのでありますが、民間給与調査の調査方法というものは非常に進歩した方法であるというので、統計委員会のほうでも着目されまして、日本にもこういつたいい調査があるのだということをアメリカのほうへ報告いたしたというような例もございます。ちよつと余談でありますが、かくのごとく我々の調査方法というものは相当研究されたものであるということを申上げたいのであります。
 以上のような方法によりましてこの民間給与調査というものを行いました。その結果俸給表を作成いたしたわけであります。従いまして我々の作成原理というものは従来と何ら変つていない。ただ従来行なつておりましたことをより厳格に表現するという方法にしたので、そこに何らの意図は入つていない、こういうことを申上げたい。我々は最初昨年の年末頃に昨年の五月の基準で勧告したのでありまするが、これがまあ本年の一月から実施されておる。非常にずれがあるということはこれは当然認めております。昨年の基準におきまして、即ち十二月或いは十二月頃に昨年の五月以降朝鮮動乱等が起つております。その結果いろいろ経済事情に変化があつたということは御存じの通りでありますが、最初船賃が上り、生産財の暴騰、或いは繊維品等の思惑等もありました。併し消費財にそういう結果が画然と現われて来たというのはこれは比較的後の話でありまして、年末押迫つた頃からそういう状況がぼつぼつはつきりして参つたのでございます。そういう状況がございましたので、人事院といたしましては民間給与調査、即ち我々が給与べース改訂の基礎資料として用いまする民間給与調査というものは、これは例年のように五月になつてやつておつたのでは間に合わないのではないかというようなことを考えまして、特に三月分の民間給与調査について調査を行なつたのであります。これは我々は予算の点もございまするが、本年度の予算が使い得る最も早い時期にやつたということになつております。その三月分の調査をやりました。そうしてそれでは三月で勧告したらいいではないかというような議論も勿論出て参るわけでありまするが、その後の状況を見ておりますと、なかなかこの三月でやつたのではその民間給与調査の結果が得られます頃になりますると、もうすでに新しい資料が得られておる。例えばこのCPS等によりますと、三月よりも新しい資料が得られておるという状況に達しておつたのであります。そういうこともございまして、いろいろその三月から後の推移を見ておつたのでありまするが、これは三月でやるよりもむしろ五月当時得られた一番新らしい資料、五月の資料でやつたほうがより公務員の給与に適応する。即ち我々は三月より五月のほうが三・七%程度はすべて上廻つているということを統計上確認といいますか、まあ見当を付けたわけであります。三月のままでやるよりも五月でやつたほうがよろしいということになつたのであります。そのうちに減税の問題でありまするとか、その外主食の値上げの問題でありますとか、電力料金、或いはその他ガスとかいろいろなものの値上げというようなことがいろいろ言われて出した。決定したわけではありませんが、相当そういうことが取上げられている状況になつた。こういう問題も入れるべきであるかどうかということについてもいろいろ検討いたしたのでありまするが、併し確定しない事柄は何としても取上げにくい。人事院は従来確定した資料に基きまして勧告を行なつておつたのでありまするから、従つて減税のことがあろうとも、これはまだ確定していないから取上げられない。又当時におきまして電力料金或いはガス料金その他のものも確定しておらないという状況でございましたからこれも取上げられない。ただ主食の値上げだけは八月一日付を以て確定いたしましたので、主食はこれは取入れることにいたした次第であります。そういう工合でありまして、五月の水準を基礎にいたし、主食の値上りだけは八月一日から行われましたものを入れまして、そうしてこの勧告にありまする給与俸給表並びに給与体系というものが八月一日から実施せられるということを期待いたしまして勧告いたしたいということになつております。
 我々のほうでいろいろ勧告に使いました資料等も、最近まとめまして人事院月報に集録いたしたのでありますが、昨日できて参りまして、ずいぶん校正等に注意いたしたのでありまするが、なお間違いがないだろうかということを目下検討しておりまするので、若しあれば正誤表を附けまして当人事委員会のほうにも成るべく早く差出したいというふうに思つております。以上御説明申上げます。


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455. 俸給表の作成方法=人事院月報第29号 [49.「人事院月報」拾い読み]

 人事院月報第29号(昭和27年8月号)は、給与勧告特集である。トップの記事の見出しは、「公務員の給与引上げを勧告 総平均月額13,515円に 5月1日から実施を要望」となっている。このノートが注目をするのは、勧告の内容そのものではなく、勧告案作成の経緯を説明している記事である。とりわけ、23頁以下の「俸給表の作成と新俸給額」の内容はこのノートにとって大変興味深いものとなっている。
 冒頭、次のように記述している。

 俸給表の作成方法は昨年と同様であって、民間の職種別の賃金を公務員の本俸相当額に換算したものを公務員の職務の級別に格付けしたものの平均額と、独身青年男子の標準生計費という俸給表の要点、要点における基礎金額に使用する方法をとっている。(本誌第17号参照)(23頁)

 ( )に「本誌第17号参照」とあるので、そうすればよいのかもしれないが、何せ県立図書館で禁帯出の図書を閲覧し、一部コピーしながらの考察なので、このまま第29号で確認していくこととする。
 さて、続いて細部の点について昨年との差異を述べていくが、俸給表の作成方法の基本を理解する観点から適宜抜粋する。

(4) 俸給相当額とその級別平均額の算出(第16表)及びこれらについて最もよくあてはまった曲線としての等比級数曲線の求め方(第18表)、さらにこれを3月から5月に換算したものを勤務地手当のつかない地域に直す操作については全く昨年度同じである。(第17表、第19図、第20表)
(5) 上記の標準生計費及び公務員の級別にみた民間給与の俸給相当額の補正額を一般俸給表の各級の中央号俸に対比させて、各号俸の金額を刻むこと及び民間の初任給の考慮のしかたについても、別に昨年と代わるところはない。(第20表及び第21表)(同頁)

 これまで、瀧本忠男著書『公務員給与制度総説』(学陽書房、昭和25年)や弥富賢之著『職階制と人事行政』(教育資料社、昭和27年)、瀧本忠男・慶徳庄意・船後正道著『新俸給制度詳解』(学陽書房、昭和32年)などの古書の記述を紹介し、だいたいのイメージは理解してきたが、ここには更に具体の手法が示されている。

 まず、民間給与調査職種を公務員の職務の級に格付けする。(第15表)
 次に、公務員の職務の級別にみた職種別民間給与額から平均俸給相当月額(東京換算額)を算出する。例えば、職務の級=2については、職種別では、給仕5,897円、圧延見習工7,854円、溶接見習工5,671円、機械工作見習工4,439円、写図見習工5,513円、印刷見習工4,121円、紡績見習工4,878円となっており、職務の級別は5,482円となっており、職務の級=10では、経理課長29,087円、庶務課長23,882円、資材課長25,428円、技術課長26,136円、冶金作業職長25,083円、機械工作職長21,415円で、職務の級別は25,172円。いずれも単純に平均を算出している。この表の注意書きには、俸給相当月額の算出方法など、細かな点が示されている。(第16表)

 次に、第16表に記載している民間給与の俸給相当額から職務の級別の俸給相当額を算出していく。第17表に示されている。具体的な金額は省略するが、表の構成(手順)は次のとおり。
 職務の級=(A)、俸給相当額(27年3月東京に換算した額)=(B)、(B)の補正額(最小自乗法による y=15,715 1.1023X)=(C)、27年5月換算額(C×1.0116)=(D)、勤務地手当のつかない地域への換算額(D×0.8)=(E)
 この結果は、第18表に俸給相当額を縦軸とし、職務の級を横軸とする「俸給相当額算出図」が示されている。民間給与調査により算出した俸給相当額(B)を結んだ線は折れ線グラフになるのだが、最小自乗法により補正された額(C)を結んだ線は等比級数曲線となっている。

 30頁には「一般俸給表作成一覧図」(第20表)なるものが掲載されている。横軸は職務の級で1級から14級までとなっている。縦軸は金額である。俸給曲線と思われる線は、等比級数曲線ではなく、直線となっている。ただし、3級から2級・1級へはその直線よりも高い額の線が引かれている。各職務の級には上下の幅があり、その真ん中辺りを直線が通っている。そして、よく見ると、縦軸の金額の間隔は同じではなく、同じ1,000円の幅であっても金額が上昇するに従って幅が狭くなるように描かれている。等比級数曲線を直線に直した場合の金額が記されているのである。

 31頁には「新俸給額の内容」と題した第21表が掲載されている。これを見ると、2級3号俸の位置に「成年男子標準生計費」として4,700円が記載され、同号俸の新俸給月額の欄は4,700円となっている。そして、民間給与相当額の級別平均額を見ていくと、1級は括弧書きで3,586円と記載され、対応する1級の号俸は6号俸までのうち3号俸となっており、新俸給月額は4,500円となっている。生計費を考慮したと思われる。以下、2級4,357円→2級7号俸中の4号俸4,800円。3級5,294円→3級7号俸中の5号俸5,500円。4級6,432円→4級8号俸中の4号俸6,250円。5級7,815円→5級10号俸中の5号俸7,500円。6級9,495円→6級11号俸中の6号俸9,500円。7級11,538円→7級10号俸中の5号俸11,550円。8級14,018円→8級10号俸中の5号俸14,000円。9級17,034円→9級10号俸中の5号俸17,100円。10級20,696円→10級8号俸中の4号俸20,800円。11級25,147円→11級6号俸中の3号俸25,200円。12級30,555円→12級6号俸中の3号俸30,600円。13級37,126円→13級6号俸中の3号俸37,200円。14級括弧書き45,110円→14級6号俸中の3号俸45,200円となっている。
 ずらずら書き連ねたのだが、概ね各職務の級の中間に位置する号俸(中間に位置する号俸がない場合にはその下(又は上)の号俸)と民間給与相当額の級別平均額とのバランスをとっている。
 俸給表は通し号俸となっていて、直前号俸との差額については、100円から始まって、号俸が上昇していくに従って、150円、250円、450円、500円、650円、800円、1,000円、1,200円、1,400円、1,600円、1,900円、2,300円と上昇していく。
 こうして、この時代の俸給表は作成されたのであった。


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454. 教員の勤務時間に条例で上限? 大阪市 [8.トピック]

 NHK関西ウェブニュースに次のような記事が掲載された。(7月8日6時41分)

 教員給与見直し 大阪市検討へ
 大阪市は、優秀な教員を確保するための取り組みの1つとして、教員の初任給の引き上げなど、給与体系の見直しを検討することになりました。
 大阪市は、子どもの学力の水準を引き上げるためには、優秀な教員を確保することが必要だとして、7日開かれた市の総合教育会議では、その具体策が話し合われました。
この中で、吉村市長は、「優秀な人材を集めるためにも全国一高い初任給を実現したい。また、頑張っている先生が報われる仕組みが必要だ」と述べました。
 これを受けて、大阪市は、今後、教員の初任給の引き上げや、能力が高い教員は早く昇進させることなど、給与体系の見直しを検討することになりました。
 一方、大阪市は、教員の長時間労働の解消に向けて、すでに一部の学校で導入している部活動の外部委託をさらに広げることも検討するとしています。

 7月12日の産経WESTは次のように伝えた。(2017.7.12 08:38更新)

 能力に応じた給与制度に 大阪市教委、30年度から
 大阪市教育委員会は、初任給の引き上げなどを盛り込んだ新たな人事給与制度を平成30年度から導入する。一般教諭と首席指導教諭の間に新たな役職を設け、能力に応じた昇給の仕組みに改める内容で、予算編成に取りかかる30年1月までに労働組合との交渉を終えたい考えだ。
 新制度は、一般教諭が37歳までに新設される役職の選考に合格しない限り、それ以降の昇給を停止する一方、合格者には職務の困難度や責任に応じて昇給に差がつく内容。市は、能力の高い教員が早く昇進できるようにすることで、教頭や校長など管理職の「なり手不足」の解消につなげたい考えだ。
 また、大阪市の教員の初任給は政令指定都市20市の中で11番目で、近畿でも神戸市や京都市より低いため、市教委は具体的な引き上げ水準を検討するほか、優秀な人材の確保につながる研修制度なども盛り込むとしている。
 吉村洋文市長は総合教育会議で「頑張っている先生がきちんと評価され、昇給する制度が必要だ。全員(の給与)が上がっていく現行の制度は行き過ぎだ」と述べた。

 そうか、あの能力主義の給与制度をいよいよ実施するのか…。(440. 教員給与を能力重視に(その後)、427.教員給与を能力重視に、大阪市教委)

 ところで、7月8日の産経新聞を開いてみると、「教員残業に上限 大阪市 規制導入検討」との中見出しで、同じ大阪市の総合教育会議で出た別の話が記事になっている。

 大阪市は7日開いた総合教育会議で、市立学校の教職員の時間外勤務(残業)時間に上限を設ける方針を決めた。改正労働基準法に明記された時間外労働の上限規制は私立学校と国立大学附属校の教員には適用されるが、公立校の教員は対象外。このため市は独自に条例や規則で制度化する必要があると判断した。(以下、略)

 う~ん。給特法がある下で、どうするのかな。労基法37条の割増賃金制度は適用除外された上で、労基法36条のサブロク協定が空振りになる同法33条3項が適用され、しかも限定4項目という枠をはめ、あとは給特法や労基法の関知しない世界(安全配慮義務は適用されるけれど)という組立なのに、そこにどのように条例や規則で規制を導入しようというのか…。

 もしかすると、高度プロフェッショナル制度の創設を盛り込んだ労働基準法等の一部を改正する法律案の規定が参考になるのかもしれない。
 厚生労働省のHPから、平成27年4月3日国会提出の法案を見る。
 まず、概要を見ると、「職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。」とある。
 「健康確保措置等を講じる」というところがポイントになる。
 健康確保措置等について法案を見ると、確実に措置を講じないとおいけない事項は次のとおりになっている。

第四十一条の二
 三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(次号ロ及び第五号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
 四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
  イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
  ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
  ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。

 要するに、まず、「健康管理時間」を把握すること。
 次に、①勤務間インターバル制度の導入、②健康管理時間の上限設定、③年104日以上の休日取得のいずれかの措置を実施すること。
 ポイントは、「勤務時間」という概念を使用せず、「健康管理時間」という概念を使用したところにある。この「健康管理時間」は「勤務時間」と一致するとは限らない。そのような概念であれば、給特法が作り上げている教員の勤務時間管理の世界にも、上手くなじむかもしれない。そうすると、大阪市が条例又は規則で規定することの可能性も見えてくるが…。さて、どうなっていくのか…。


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453. 給特法下の教員の労働時間管理の特徴と問題 [8.トピック]

 『季刊教育法』(第192号)(2107.3.25発行、エイデル研究所)の特集は、「ブラック部活」その2である。
 表紙の説明では、「「部活動改革元年」であった2016年。ようやく改革の「兆し」は見えるが、それは「かけ声」だけなのか-。今号は「その1」に引き続き、部活動における教職員、加えて児童・生徒の実態に迫る。反響を呼んだ「ブラック部活」第2弾!」としている。
 特集の冒頭は、「まだまだ黙っていられない!「ブラック部活」の実態2」と題した座談会なのだが、このノートで注目するのは、小川正人教授執筆の「教員の長時間労働と給特法―給特法の問題点と改廃の課題―」である。小川正人教授は、かつて中教審・教職員給与の在り方に関するワーキンググループの副主査を務めた方であり、給特法の問題点を深く理解している人物の一人といってよいと思う。

 小川教授は、「給特法下の教員の労働時間管理の特徴と問題」とする項で、3つの視点から整理し、指摘する。概略を記す。
 第1:個々の教員に正規の勤務時間の割振りを適正に行い、時間外労働が生じないようにすることになっているが、実際にはそうした割振りでは対処できないほどの時間外労働が生じているのが実態。それらの時間外労働の多くが管理者の「指揮監督下」にある労働時間ではなく、教員の任意の自発的行為であるとされて長時間の時間外労働を抑制できるように機能するものにはなっていない。
 第2:歯止めとして、時間が労働を命じることのできる業務を四項目に限定し、その四項目についても時間外労働を命じることができるのは「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるとき」と規定。そうした規定にもかかわらず時間外労働の上限が定められておらず、無定量の労働義務を課されている点で労働時間制と相容れないという重大な欠陥がある。また、教職調整額は労働時間制や時間外勤務手当の趣旨から外れた特異な制度であり、憲法27条の規定に照らして問題。
 第3:本来、長時間労働のブレーキの役割を果たすことが期待される時間外勤務手当が、給特法下では、教職の「特殊性」を理由に長時間労働の抑制機能を有していない一律支給の教職調整額に取って代わられ労働時間管理を適正に行うという意識を希薄化させていることは否めない。

 次に、萬井隆令(龍谷大学名誉教授)による給特法がらみの判例の3類型、①「調整」推定説、②「労働」性否定説、③超勤手当一切不要説を簡単に説明した後、近年の判例の主流でアル「労働」性否定説の論理とその問題について、2007年9月27日の札幌高裁判決を概観することで確認している。ポイント部分を抜粋する。
 「判決では、先ず、給特法の趣旨を確認する作業を行い、教員の職務は「本来的に教育職員の自発性、創造性に期待するところが大きいという面で、いわゆるプロフェッションの一員として、一般的な職業とは異なった特質を持つ」ことが強調され、その上で、教員の勤務(形態)の特殊性から労基法37条の適用を排除して勤務時間の内外を問わず包括的に評価する教職調整額が支給されているとその正当性を確認している。そのため、教員が正規の勤務時間を超えて勤務した場合でも、時間外勤務手当は支給されないと解するのが相当である、と結論づけている。」

 「しかし、あらゆる時間外勤務が時間外勤務手当支給の対象にならないと断じている訳ではなく、時間外勤務に至った事情、職務内容、勤務の実情等では手当支給の対象になる場合もあるという考え方も示している。その点について、判決は、校長等の具体的な職務命令があった場合や、無くてもそれと同じように教員の自由意志を強く拘束するような状況の下で時間外勤務が行われ常態化しているような場合で、しかも安全配慮も十分なされていない場合には時間外勤務手当支給は認められるべきであるとしている。」

 「判決では、時間外勤務が校長の職務命令かもしくは職務命令と同視できるほど教員の自由意志を強く拘束するような形態で行われたのであれば時間外勤務手当の対象になるが、当該の業務は教員の自発的意志で行われたもので時間外勤務手当支給の対象にならないと判断している。教員が担当する校務分掌や部活動、年間教育計画等の多くは確かに限定四項目に含まれるものではないが、学校と教員の業務といえるものであり、それを欠いては学校の教育活動や経営が成り立たない重要な業務である。それにもかかわらず、それら業務を受けるが受けないか、遂行するかしないかは学校長の指示ではなく個々の教員の自由意志による示達的行為であるとして「労働」性を否定している。」

 萬井が給特法下の時間外勤務手当請求事件判決で示された「労働」認識は他の民間企業の就業問題を扱った労働裁判判例のそれとの断絶が大きすぎると批判していることについて判例を引いて紹介した後、次のように述べる。
 「教員の職務・勤務時間の殆どが、学校の教育活動や経営を構成する業務内容について学校長(副校長、教頭)が自らの責任・権限の下で各教員に割振りしているものであり、個々の教員の自由意志による自発的行為によるものであるとはいえない。学校長(副校長、教頭)の責任・権限の下で割振りされた業務である以上、その業務を個々の教員が創造的・自発的に遂行するか否かにかかわらず、その業務遂行は学校長の指揮命令下にある「労働」であることは明白である。」

 小川教授は、「教員の時間外労働の改善に向けて」と題する最後の説で次のように述べる。

 「以上見てきたように、給特法は、教員の長時間の時間外労働を抑制する機能を有していない。今日、大きな問題となっている部活動についても、学校長が学校の教育活動の一環として教員に部活動顧問を割振りしているにもかかわらず、時間外勤務を命じることができる「限定四項目」に該当する業務でないため、正規の「労働時間」とは認知されず、教員の任意の自発的行為と見做されている。」

 小川教授はこのような見解を示されるが、そもそも給特法は、教員の長時間の時間外労働を抑制する目的をもって制定されたものではない。教員に対しては超過勤務手当を支給しないとう運用を行ってきたことに対して超過勤務手当の支給を求める訴訟が多数提起され、超過勤務手当の支給を容認する判決が続出する中、いわば超過勤務手当の肩代わりをする教職調整額を支給することでもって立法的解決を図ろうとしたのが主たる目的であった。確かに、超過勤務を命じないことを原則とし、限定4項目を制度として設けたのではあるが、罰則規定を設けなかった時点で歯止めにならないことは必然ではなかったか。
 この点に関して、超過勤務手当の支給は長時間労働を抑制する一定のインセンティブはあるのかもしれないのだが、一方、罰則を設けず割増賃金制度のみのアメリカは、欧州各国より年間の勤務時間が長かったのではなかったか。また、現在の我が国の民間企業や中央省庁の長時間労働の実態をどう理解すべきなのか。教員の時間外労働は、OECDの調査に基づけば更に厳しい実態なのではあるが、割増賃金制度の存在だけでは抑制効果が小さいだろう。

 続いて、小川教授は、部活動について学習指導要領における取扱いや国賠法の適用関係を述べた上で、「そうした部活動の顧問である教員の業務は、教員個々による任意の自発的行為であるとするのはあまりにも無理のある説明である。事実、そうした乖離を埋めるために部活動手当という特殊勤務手当が支給されてはいるが、それはそうした乖離を誤魔化すための弥縫策ともいえ事実上の時間外勤務手当というべきものである。」と主張されている。
 そのように理解され主張される気持ちは分かる気はする。しかし、もし、給特法が前提とする教員の職務と勤務態様の特殊性の理解に正当性があり、給与水準として現在適当かどうかは横に置いて教職調整額という本俸的給与で措置するという手法もありだとするならば、学校の管理下において、すなわち学校が責任を取る体制の下に(国賠法が適用される形態でもって)行われる部活動の指導業務は、校長が命じて行わせようが、教員個々による任意の自発的行為として行われると考えることにしようが、従事した以上は教員が自らの職務を遂行した、すなわち、勤務したと評価すべきものだと考える。その上で、給与問題としては、部活動指導業務に従事した教員に対する処遇はどうあるべきか、手当の水準をどのように設定すべきなのかを考えればよいのではないか。一方、そうした部活動指導業務が過度にわたり、健康被害が生じることのないように歯止めかけるには、そしてその歯止めの実効性を確保するにはどうすればよいのかを給与問題とは別に考えるべきではないのか。

 小川教授は、「給特法のロジックと学校現場における教員の業務実態の間には大きな断裂が存在しており、その断裂が教員の長時間の時間外労働を生み出している原因となっている。」と主張される。
 小川教授が指摘されるとおり、「大きな断裂が存在」しているのだろう。しかし、「その断裂が教員の長時間の時間外労働を生み出している原因となっている」という認識は全面的には支持できない。むしろ、その大きな断裂を生み出した根本原因、すなわち教員に担わされている増大しつづける膨大な業務量、にもかかわらず「子どものため」として自ら進んで、あるいは暗黙の圧力のような文化の中で、我が身を削ってまで業務に従事する、あるいはせざるを得ない労働慣行、それを容認し、あるいは教員であれば当然であるかのごとく求める我が国の国民文化、それを支持する日本的雇用慣行と日本人の共同意識ともいうべきものが、教員の長時間の時間外労働を生み出している根本原因なのだと理解すべきではないのだろうか。

 「その断裂を埋める有効な手立てが提案できないのであれば、給特法を廃止して労基法の原則と仕組みの下で教員の労働時間管理の適正化を図っていく方が有益である。」と小川教授は続ける。
そして、時間外勤務手当支給に移行する場合の懸念や心配を述べるのである。「…、あるいは、教育活動の質にどのような影響を及ぼすのかなどの検証も不可欠となるであろうことは付しておきたい。」と結んでいる。

 私立学校や国立学校においては既に超過勤務手当制度の下にある。その実態を調査し、小川教授の懸念や心配に応えられるような検証を文部科学省は実施すべきだと思う。しかし、文部科学省は手を出さないのだろうな…。その後、どうするの、と問われるから…。
 しかし、教員の勤務の在り方や教員の勤務時間管理・時間外労働規制の在り方は、教育の在り方そのものの問題に帰着する側面がある。難しい問題だと思う。
 ただ、ハッキリしていることは、超過勤務手当制度への移行だけではだめだろうということである。一つは、物理的な上限規制がなければダメということ。二つは、上限規制を担保する仕組みを公務員にも導入しないとダメということ。
 しかしである。一方で、教員一人当たりの業務量を人間らしく働き生活できる量に減らすためのあらゆる対策の実行が一番大切なのではないか。


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452. 中学教諭の6割、過労死ライン [8.トピック]

 4月28日、文部科学省は小中学校教員の長時間勤務が悪化している現状を示す調査結果を公表し、各紙が大々的に報道した。
 例えば、読売新聞「YOMIURI ONLINE」から。

中学教諭の6割、過労死ライン…勤務11時間超
 文部科学省は28日、公立小中学校の教員を対象にした2016年度の勤務実態の調査結果を発表した。
 教諭の平日の勤務時間は、06年度の前回調査より30~40分長い11時間以上となり、小学校教諭の34%、中学校教諭の58%が、厚生労働省の「過労死ライン」に該当した。中学では教諭が土日の部活動にかける時間が倍増した。松野文科相は同日の閣議後記者会見で「看過できない大変深刻な事態」とし、文科相の諮問機関の中央教育審議会で「教員の働き方改革」の方策を議論してもらう考えを明らかにした。
 調査は昨年10~11月、全国の公立小中学校の校長、副校長・教頭、教諭ら約2万人から連続7日間の勤務状況を聞いた。
 平日の平均勤務時間は、小学教諭が前回より43分長い11時間15分、中学教諭は32分長い11時間32分だった。
(2017年04月28日 11時40分)

 その他の各紙の大見出しを拾ってみる。
 共同通信=「中学校教諭57%過労死ライン 小学校は33%」、「超過密労働、教員悲鳴」、「「子のため」精神論限界」、「小学校英語/アクティブラーニング…現場に”宿題”教員重荷」、「部活動が勤務時間押し上げ 中学教諭、土日で倍増」
 朝日新聞=「過重な業務 教員悲鳴」、「中学の6割「過労死ライン」超え」、「授業増・部活「休みない」」、「増員や残業規制 検討を」
 読売新聞=「中学教諭58%過労死ライン 勤務平均 平日11時間超」、「脱ゆとりで授業増」、「「4か月で休み3日」部活顧問 過酷な勤務」、「「脱ゆとり」教諭に負担」、「多くが過労死ライン」、「授業準備や保護者対応…「どれも大切」」
 毎日新聞=「「休み月1ずっと忙しい」、「朝6時出勤、帰宅は夜8時」
 産経新聞=「教員「仕事際限ない」」、「過重労働調査 月の休み3日」
 日経新聞=「超勤週60時間超57%」、「中学教諭、部活の指導長く」、「教員の負担減急務」

 この間の教育改革や新法制定に伴う業務が増大する中で、学校現場の実感として「確実に超勤が増えている」との声を聞いていたのだが、それが裏付けられた。教育の質を確保する上でも、教員が心身ともに健康で働ける環境を確保することが大事であり、教員の過酷な勤務実態の抜本的な改善が急務になっている。

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