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468. 文部科学省若手職員が疑問に答える [29.読書]

 高橋洋平/栗山和大『改訂版-文部科学省若手職員が学校管理職の疑問に答える-現代的学校マネジメントの法的論点 厳選10講』(第一法規、2018年4月15日改訂版発行)

 「はじめに」から抜粋
本書は、そのような学校マネジメントにおける課題の中で、
○ 学校現場の管理職を中心とした学校関係者が、主に法令の観点からの判断が求められる課題に関し、肩に力を入れることなく、気軽に読んででいただける入門書とすることを特に意識して、第1講から第10講までの問題の解説はもちろん、昨今議論となっているテーマや、発展的内容のテーマについても、会話形式やコラム形式を用いて、わかりやすい解説に努めたもの
○ 頻出かつ現代的な課題を精選して取り上げるとともに、法令の観点からの解説を中心として、課題の背景や関連する教育政策とのリンクについても解説したもの
となっています。

 第1講から第10講のテーマは、次のとおり。
第1講 教育関係法令の基礎知識(入門編)
第2講 教育委員会や地域との関係・連携
第3講 PTAが主催して学校や教員とともに行う補習授業
第4講 部活動における学校事故に対する危機管理
第5講 土日や祝日における授業や運動会の実施
第6講 教員以外の多様な専門スタッフのマネジメント
第7講 教員の「心の病」への対応
第8講 子供への指導が不適切などの問題のある教員への対応
第9講 制限される政治的行為の判断
第10講 学校現場における職員団体への対応

 入門書ということだが、しっかりと法的論点が押さえられているので、学校管理職だけでなく、教育委員会事務局職員にも読んでほしいと思う。

 教員給与に関わっては、第5講のCOFFEE BREAKで「教職調整額と超勤4項目」が取り上げられている。中教審の教職員給与の在り方に関するワーキンググループ第10、11回(平成18年12月)資料等を出典に挙げて、歴史的経緯も含めた制度の平易な解説から初めて、中教審の「学校における働き方改革特別部会」で検討が行われているところまで著者二人の会話が続く。

 COFFEE BREAKでは二人の掛け合いの形で議論が深められていくのだが、著者たちの誠実な人柄や教育行政に対する熱い思いがにじみ出ていて好感が持てる。高橋氏は昭和57年生まれ、栗山氏は昭和60年生まれの30歳台。文部科学省を支える将来の幹部職員となられることだろう。


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467. 公務員法と労働法の交錯 [29.読書]

 小嶌典明・豊本治『公務員法と労働法の交錯』(ジアース教育新社、2018年3月)
 小嶌氏は、大阪大学名誉教授で、労働法、公務員法等が専攻分野。規制改革委員会の参与等として雇用・労働法制の改革に従事されたと紹介されている。

 まえがきに、「公務員法がわかれば、労働法の理解も深まる。本書は、こうした編者が共有する考え方から誕生した。」とある。目次をみると、「民間とは異なる退職手当の仕組み」、「労働関係法令は適用除外が原則」、「無理のある行政機関への派遣法の適用」…。地方公務員への労働基準法の適用の章では、「労働基準法の原則適用と国家公務員準拠」、「労働基準法適用の限界」…。臨時・非常勤職員にかかわる章でも面白そうな項目がずらりと並ぶ。

 初出はいずれも『阪大法学』であり、学術誌だけにマニアックである。知らなかったことも多々あり、「そうだったのか!」と思わせる記述が盛りだくさんである。「臨時・非常勤職員制度がわかれば、公務員制度の理解が深まる。」と思っていたものだが、違いに着目しながら細部に分け入っていくことで、格段に理解が進むのである。勉強になります。
 小嶌氏の著書で『法人職員・公務員のための労働法72話』(ジアース教育新社、2016年1月)・『法人職員・公務員のための労働法判例編』(ジアース教育新社、2016年2月)も面白い。併せて、お薦めです。

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466. 教員給与を能力重視に(その後Ⅱ) [8.トピック]

 2018年4月27日付けの「内外教育」誌に次の記事が掲載されている。

「◎教諭初任給、月2万9000円上げ
 大阪市は2019年度から、市立小中高校教諭の初任給を月額で約2万9000円引き上げる。市教委によると、全国の都道府県と政令市で最高額になる見込みで、大卒新人の小中学校教諭は26万1306円になる。
 引き上げるのは、給料月額と教職調整額、地域手当を合わせた月額給与。団塊世代の退職に伴い大量採用が続く中、優秀な人材を確保するのが狙いだ。同市の教諭の初任給は18年4月時点で政令市20市の中で11番目で、大阪府や京都市、神戸市より低い。
 新人教諭の給与が2年目以降の教諭を上回らないよう、2~4年目の給与を増やして対応する。勤続4年目までは初任給と同額の給与で、5年目から昇給する仕組みとする。19年度の採用予定者約650人と合わせて計1180人程度が増額の対象で、人件費は年間約1億5000万円増える見通しだ。
 引き上げに必要な財源は、市教委の予算内で捻出する方針。財源のめどを付けた上で、市は来年の2月議会に条例改正案を提出する予定だ。」

 大阪市といえば、「教員給与を能力重視に」ということで、このノートで過去2回取り上げた。(「427.教員給与を能力重視に、大阪市教委」、「440.教員給与を能力重視に(その後)」)
その後のその後が気になるところだが、先に内外教育の記事について、大阪市の現行の給与条例で確認しておこう。現行の高等学校等教育職給料表と小学校・中学校教育職給料表では給料月額が微妙に違うので、両方確認しておく。

 高校教諭の大卒初任給は2級9号給、小中学校は2級17号給なので、これを基準に考察してみよう。地域手当は、16%。
 (高校教諭)
  初任給 2-9 192,700円+7,708円+32,065円=232,473円
  2年目 2-13 199,400円+7,976円+33,180円=240,556円
  3年目 2-17 207,600円+8,304円+34,544円=250,448円
  4年目 2-21 216,600円+8,664円+36,042円=261,306円
 (小中学校教諭)
  初任給 2-17 192,900円+7,716円+32,098円=232,714円
  2年目 2-21 199,600円+7,984円+33,213円=240,797円
  3年目 2-25 207,800円+8,312円+34,577円=250,689円
  4年目 2-29 216,900円+8,676円+36,092円=261,668円

 ん? 内外教育の記事では「大卒新人の小中学校教諭は26万1306円になる」とあるけれど、もしかして給料表を取り違えているのかもしれない。
 いずれにしても、現行初任給基準の号給の号数に4号×3年=12号を加算した号数の号給を初任給とし、3年間は昇給しないということを考えているのかもしれない。

 さてさて、その後のその後はどうなったのか。
平成30年2月説明会の資料が存在するので、内容を見ておこう。資料は、「権限移譲にかかる教職員の給与制度等について(主務教諭等)【施行日:平成30年4月1日】」と題するものである。

 「1 給料号給等」には、高等学校等教育職給料表及び小学校・中学校教育職給料表の新旧対照表が掲載されている。
 これによると、2級の号給について、教諭に対してはこれ以上昇給できない上限号給が設定され、主務教諭に任用されると更に昇給できる仕組みとしている。
それぞれ号給と給料月額を抜粋しておく。

(1) 高等学校等教育職給料表
  改正前 【2級】教諭等 1号給175,600円~149号給409,100円
  改正後 【2級】教諭等 1号給175,600円~65号給327,500円
        主務教諭等 41号給269,700円~149号給409,100円
(2) 小学校・中学校教育職給料表
  改正前 【2級】教諭等 1号給159,200円~161号給400,900円
  改正後 【2級】教諭等 1号給159,200円~73号給327,900円
          主務教諭等 49号給270,000円~161号給400,900円

 主務教諭に適用する新たな職務の級を設けることなく、2級の号給の適用範囲を定めるというのは、どう理解すればよいのか。
 職務の級は同じであるから、主務教諭と教諭は、職務の複雑さと責任の度合いが基本的には同程度であるということになる。主務教諭も学校教育法上は同じ教諭であるという位置づけであろうから、当然かもしれない。
 副校長と教頭では職責が異なるが、同じく3級が適用されることを踏まえると、この場合とほぼ同じとの考えも成り立つかもしれない。しかし、教頭だから3級に上限号給が設けられるという考え方は、どこも採用していないのではないか。教諭だから上限号給を設けることの制度上の正当な理由が想像できない。

「2 主務教諭等任用時における昇給等の取扱い」とあり、次の記述がある。
(1) 教諭等として昇給 → 主務教諭等に任用(昇格メリットは発生しない)
 教諭、養護教諭、栄養教諭、教諭(指導専任)又は総括実習助手(以下「教諭等」という。)が、4月1日(昇給日)に主務教諭、主務養護教諭又は主務栄養教諭(以下「主務教諭等」という。)に任用される場合、教諭等としての昇給(教諭等としての上限号給が適用される。)した後に、主務教諭等として任用される(任用後に受ける号給は、教諭等としての昇給後の号給)

 主務教諭に任用されたとしても、昇任ではあるのかもしれないが、昇格はしない。従って、昇格メリットはない。けれども、最高号給まで昇給できる可能性が生まれるということらしい。元々、大阪市教育委員会は能力主義で給与制度を運用したいという考えであったと思うが、結局、教諭と主務教諭の職務と責任の違いについて、人事委員会をはじめ関係者に対して職務給の原則を踏まえた説明ができなかったということなのではないだろうか。それにしても、よく理解できない…。

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465.地方公務員の給与決定に関する調査研究報告書 [8.トピック]

 平成30年3月、一般財団法人自治総合センターから「地方公務員の給与決定に関する調査研究報告書」が取りまとめられた。調査研究の問題意識について、次のとおり述べられている。

 「地域における国家公務員の給与水準を目安とするための比較にあたってはラスパイレス指数を用いることが適当とされているところですが、近年、このラスパイレス指数が漸増傾向にあり、その要因分析が喫緊の課題となっています。
このような状況を踏まえ、今後の地方公共団体の給与決定に際して、その参考に資するため、人事委員会の勧告、国と異なる独自の給料表、職員構成における上位級比率等について調査研究しました。」(はしがき)

 国と異なる独自の給料表に関しては、まず、次のように述べる。
 「国の俸給表と異なる独自の給料表は、大きく分けて、国の俸給表の構造を援用しつつ、水準について独自の調整を行う「水準アレンジ」型と、国の俸給表とは級や号給の構成が異なる「構造アレンジ」型の2種類に分類することができる。」
そして、特徴ごとに次のとおり分類する。

<独自の給料表の種類>
①水準アレンジ
・国の行政職俸給表(一)に一定「額」を加減したもの
・国の行政職俸給表(一)に一定「率」を乗じたもの
②構造アレンジ
・国の行政職俸給表(一)の最高号俸を超える月額区分を定めた「継足」(国準拠継足と独自継足)
・国の行政職俸給表(一)の最低号俸を下回る月額区分を定めた「下駄履き」(国準拠下駄履きと独自下駄履き)
・国の行政職俸給表(一)の最高号俸又は最低号俸を「縮減」したもの(高位号給縮減と低位号給縮減)
・複数の級を合わせて1つの級に「合成」したもの
・1つの級を複数の級に「分割」したもの
※上記②のいずれにも当てはまらない、国の俸給表とは級や号給の構成が異なる給料表を「独自構造」とする。

 続いて、給料表カーブの分析結果を説明しながら、問題意識を述べる。項目のみ掲載する。
① 特定の級の給料表カーブ単体でみた際に特徴的であるもの
(ⅰ)水準調整
(ⅱ)継足
(ⅲ)高位号給の非フラット化
(ⅳ)号給過多
② 複数の級の給料表カーブの関係性からみて特徴的であるもの
(ⅰ)級間の重なり
③ 職制上の段階という観点からみた際に特徴的であるもの
(ⅰ)職制上の段階について、国との対応関係が明確である場合
(ⅱ)職制上の段階について、国との対応関係が必ずしも明確でない場合
④ 職務給の原則という観点から特徴的であるもの
(ⅰ)高位の級における合成
⑤ 独自の給料表を適用しているが、ラスパイレス指数が低い団体
(ⅰ)独自の給料表を適用しているがラスパイレス指数が低い団体
(ⅱ)ラスパイレス指数を低くするために給料表を改善した団体
⑥ 給料表カーブの特徴が掴みづらいもの
⑦ ラスパイレス指数が高いが、給料表カーブに特徴が認められないもの

 「独自の給料表の構造がラスパイレス指数の上昇又は高止まりの要因の一つとなっているとの推定のもと、(略)独自の給料表が構造的に抱える問題点を分析し、その特徴ごとに指摘を行った。」と述べ、53ページ以降には、独自の給料表の給料表カーブを国の俸給表のカーブと比較して分類ごとの特徴を示している。
 これらを見ると、縦軸は給料月額なのだが、横軸は「昇給」となっている。この方法だと、①~④(又は⑤)までは単純に比較できて特徴もつかめるだろうが、全く独自の給料表を作成している場合には、比較が困難であろう。俸給表は、俸給表の運用を前提にして作成されるものであることを踏まえると、やはり、俸給制度表を作成して重ね合わせ、比較すべきだろうと思う。横軸に「昇給」を置いて初号の位置を単純に合わせて比較するのではなく、その初号の制度上の位置を確認し、相互のずれを反映させて比較すべきであり、横軸には級別の資格基準となる「経験年数」を置くべきではなかったか。ラスパイレス比較をする際には、学歴及び経験年数を合わせるではないか。そうした観点からすると、今回の研究会の給料表に関する分析には不十分さを感じる。


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464. 教員の働き方-1年間の変形労働制 [8.トピック]

 2018年3月16日付けの「内外教育」誌に「1年間の変形労働制を軸に検討-働き方改革で小川中教審部会長が表明」との見出しを付けた記事が掲載された。

「中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」の部会長を務める小川正人放送大学教授は9日、東京都渋谷区内で開催された「教育の情報化推進フォーラム」の中で講演し、教職員の勤務体制の在り方について、1年間の変形労働制への移行を軸として検討を進めたい考えを表明した。」

「…2月に開かれた部会では、今後議論すべき論点として①学校の組織運営体制の在り方について②学校の労働安全衛生管理の在り方について③時間外勤務抑制に向けた制度的措置の在り方について-が示された。これについて小川部会長は、①は夏ごろにまとめて概算要求と法令改正に反映させるとともに、②③は「かなり大幅な法令改正」を伴うため年内に結論を出したい考えを示した。」

 気になったのは、次の箇所。

「現在、教育公務員を含む地方公務員は1年間の変形労働時間制が適用除外となっているが、小川部会長はこれを認め、繁忙期と閑散期で業務のめりはりをつけたい考えを示した。文科省が昨年12月の緊急対策で示した通り年間360時間の時間外労働を上限とすれば、3分の1程度を夏季休業中などにまとめ取りさせ、残りは現行(1カ月単位の変形労働制)に従って月1~2日の休暇で消化させる。ただし…」

 「年間360時間の3分の1程度を夏季休業中などにまとめ取り」とある。学年末・学年始の休業期間は外して考えると、120時間分を2か月程度で消化するということになる。120時間といえば、120時間÷7時間45分=15.48…→約15.5日となる。平日は週5日なので、約3週間にわたって勤務時間を割り振らないことになると考えられる。
 そして、「残りは月1~2日の休暇で消化させる」とある。残りは240時間÷7時間45分=30.96…→約31日となる。ん? 1年間から2か月を引くと10か月だから、約31日÷10か月=3.1日となる。「月1~2日の休暇で消化」とは計算が合わないのではないだろうか? 計算が間違っているのか…? よく分からない…。

 しかし、そもそもである。文科省が実施した教員勤務実態調査では、1か月の時間外勤務に換算すると、小学校で約70時間、中学校では約93時間にも及んでいる。この調査は平成28年の10月及び11月の1週間について調査したものであるので、夏季休業中には残業がほとんどないであろうということを考慮して年間の残業時間を想定すると、少なく見て約10倍すればよいことになる。そうすると、小学校で年間約700時間、中学校では年間約930時間となる。そもそも年間360時間を上限として考えているのだが、前提としてまず、小学校で残業を半分に、中学校では6割減を実現しなければならない計算になる。

 1年間の変形労働時間制に移行するにしても、前提として相当な努力をして残業を減らさなければならないし、夏季休業中の研修や会議を減らさないといけない。
 それに、各種の競技大会を開催しないなどということが果たしてできるのだろうか。更には、教科等の研究会はどう考えるのか。課業期間中に開催すれば授業に支障がでるからこそ、長期休業期間中に開催するのであろう。それとも、昭和41年調査のように、職務ではないとして整理するのだろうか。地公法35条の規定に照らせば当然なのかもしれないが、現場実態には合わない。

 さて、中教審特別部会でどのように議論が進んでいくのだろうか。要注目です。


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463. 「過労」教員 働き方変える [8.トピック]

 1月16日の読売新聞「編集委員が迫る」のインタービューで、中教審特別部会の小川正人部会長を取り上げている。見出しは、「「過労」教員 働き方変える」。記事の終わりの方に「給特法」の見直しの方向性に言及している。

 「時間外勤務手当の代わりに支給されている手当は、国と地方を合わせて1500億円ほどだ。もし、今の時間外勤務の総時間に合わせて手当を支給したら、総額3兆円程度という試算もある。膨大な『ただ働き』の上に今の学校教育があるとも言える。」
 - 給特法見直しの方向性をどう考えるか。
 「ポイントは『自発的行為』とされている仕事の時間外勤務分をどう把握し、それをいかに抑制するかだ。その上で、時間外勤務分をお金で払うのか、休暇取得にあてるのかを検討する。まずは条文に、校長らに勤務時間管理の責任があることや、適切な時間管理をすること、時間外勤務の上限規制などを加え、改正すべきだと思う。」
 「時間外勤務については、一定の割合分は増額を含めた教職調整額や手当で対応し、それ以上の分については、働き過ぎの健康被害から守るために休暇を取得させることなども検討に値する。今後の中教審でぜひ、議論を深めたい」

 新聞記事だけで何かを述べるのは危険だが、給与に関して言えば、小川氏の話からすれば、教職調整額を時間外勤務手当に変更する選択肢はなく、時間外勤務の一定の割合分は教職調整額と特殊勤務手当の増額で対応する方向で検討する方向にあるようだ。どのような議論になっていくのか、目が離せない。

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462.「給特法」見直しの行方 [8.トピック]

 2017年12月22日付けの「内外教育」誌の「教育法規あらかると」欄に「「給特法」見直しの行方」と題した菱村幸彦氏の文章が掲載された。
 中教審の学校における働き方改革特別部会による中間まとめにおいて、給特法(公立の義務教育諸学校の教育職員の給与等に関する特別措置法)の見直しについて、「引き続き議論を進めていく必要がある」として、結論を先送りした状況を踏まえて書いていく。そして、考えられる三つの選択肢が考えられるとする。簡潔に述べると次のとおり。

第1 給特法の廃止。時間外勤務手当の支給→多額の追加財源が必要
第2 教職調整額の見直し。①教職調整額の増額、②教職調整額の支給率に差(内閣法制局から法律的に困難)、③特別手当の支給(部活動手当等の拡充)
第3 代替休暇の措置。時間外勤務に代替休暇を認める新たな法的整備、1年単位の変形労働時間制の導入(適正運用のために定数増が必要)

 最後に、「いずれの選択肢をとるにしても、教員の勤務時間の上限を規制する必要があろう。」と述べて結んでいる。

 紙幅の関係もあるのだろうが、第1の選択肢の説明で、私立学校や国立大学附属校には労基法37条が適用されていることが述べられていない点は残念だ。立法論として、現状をどう理解すればよいのか。公立学校に勤務する教育職員だけに認められる特殊性は何であるのか。どこが違うのか。仮に、法制定当時に違いがあったとして、現在はどうなのか。誰も何も答えてはくれないし、中教審も議論を避けているとしか思えない。

 また、ほかにも選択肢があるように思う。労働法制についても全くの素人だから専門的なことはよく知らないが、例えば、大学の教員に適用されている「専門業務型裁量労働制」を公立学校の教員にも準用する余地がないのかどうか。
 また、2015年の労基法改正案に盛り込まれた「高度プロフェッショナル制度」の考え方を借用することはどうなのだろうか。こちらの方は、勤務時間の把握は必要ないが、健康管理時間は把握しないといけないことになっている。

 ところで、第2の選択肢のうち、①教職調整額の増額が実際に選択された場合、気になることがある。
 これまでこの学習ノートでは、旧教育(二)(三)のモデル給料表を様々に考察してきたのだが、以前も述べたとおり、旧教育(三)モデル給料表については、特2級から3級に昇格した場合に逆転現象が起き、最高号俸同士を比較しても逆転が生じている。もちろん、給料表に定める俸給月額では逆転はしないよう設計されているのだが、教職調整額が本俸的給与として支給されることに鑑み、特2級には教職調整額を加算し、3級には3級の加算額を加算したそれぞれの額を比較すると、特2級より3級の方が低いという逆転現象が起きている。平成29年モデルで改めて点検すると、昇格時号俸対応表の本来モデルでは、特2級の94号俸から3級に昇格し84号俸となるところから、多くの県で採用している5,000円モデルでは、特2級の90号俸から3級に昇格し78号俸となるところからこの現象が起きる。5,000円モデルでは、最大▲5,240円になっている。(昇格時の逆転防止措置を講じたところで、その後、引き離される。)
 仮に、給特法が改正され、教職調整額が4%から引き上げられることとなったとすると、現在のモデル給料表では、この特2級と3級の逆転現象が拡大することとなる。そうなれば、当然、3級加算額の水準を引き上げなければならない。
 しかし、この間のモデル給料表の作成に当たって、全人連モデルは逆転現象に配慮したのは、特2級を創設した年だけであり、その後は無視しているようにさえ思える。「教頭に昇任し、3級に昇格すれば、管理職手当が支給されるから、逆転しない」ということかもしれない。「期末・勤勉手当は教頭の方が低くなるが、年収では教頭の方が高いからいいではないか」と考えているのかもしれない。おかしいと思うのは、このノートだけなのだろうか。
 先日、平成29年モデルでは、教育(二)より教育(三)の方が100円低くなっている号俸が初めて生まれたことを紹介した(458. 教(三)より教(二)の方が低い?(29年全人連モデル))。沿革的経緯を踏まえるならば、ありえない改定だ。給特法が改正されれば、給料表の作成にも影響が出ることを文科省の職員も中教審の委員にもわかってほしい。全人連の担当者にも分かってほしい。そして、誰より教育委員会事務局の職員にはわかってほしいと思うのだが…


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461. 学校における働き方改革特別部会中間まとめ [8.トピック]

 12月12日、学校における働き方改革特別部会(第9回)が開催され、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」が取りまとめられた。
 前々回(459.「学校が壊れる」週間東洋経済)で取り上げたのは11月28日の第8回に示されたもので、修正が行われている。
 学習ノートの関心は、給特法と教職調整額についてなので、これにかかわる修正箇所を見てみた。

 5-(5)「公立学校の教師の時間外勤務の抑制に向けた制度的措置の検討」の記述のうち、教職調整額制度の見直しについての特別本部会において出された意見に1項目が追加されている。

○ 給特法の存在を以て直ちに教師の過重な労働が現出しているわけではないのではないか。給特法制定当時の立法事情や他の職種との比較も整理すべきである。

 そして、「このような意見を踏まえて,教師の勤務の特殊性や児童生徒の学びの質を担保するために持続可能な勤務環境の在り方も考慮しながら,給特法の在り方も含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方については,引き続き議論を進めていく必要がある。」とこの節を結ぶのである。

 特別部会において出された意見の1番目と2番目は、
○ 現行の給特法が,勤務時間管理を疎かにすることにつながっている点は否定できない。また,使用者側にとっての長時間勤務の抑制に対するインセンティブにつながっていない。
○ 時間外勤務手当には,割増賃金により,使用者側に対して長時間勤務を抑制させるという性格が含まれている。どのような形であれ,制度を見直す場合には,このような性格を組み込むべきではないか。

というものであり、言い換えれば、「実効性のある超勤の歯止めを仕組みとして制度化すべき」と言っている。
 一方、追加された意見は、給特法が長時間勤務の抑制に対するインセンティブにつながっていないことを否定はしていないが、給特法の存在、すなわち超過勤務手当制度の適用除外と教員の自主性・創造性に対する期待が直ちに教師の過重な労働の原因ではないと言う。労働における自由の度合い、裁量が許される度合いの高さが、直ちに過重労働につながっているのではなく、そのことの是非とは別の原因により、過重な労働環境を強いられているのではないか、と述べているように思う。
 これらの2つの立場の意見は、一方は、超勤手当制度の導入の方向をにおわせる意見であり、他方は、教職調整額制度を維持する方向の意見と思われる。今回の追加された意見は、今後の議論に影響する重要な意見であるような気がする。


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460. 「搾取される非正規教員」週間東洋経済 [8.トピック]

 週刊東洋経済の2017.9.16号の特集「学校が壊れる」では、続いて、「搾取される非正規教員」というショッキングな見出しで、非正規教員の実態を紹介している。そして、非正規教員の給与についても記事が書かれている。

 K県K市の公立小学校に勤務する41歳の教員は、臨時採用されて7年目。すべての期間で学級担任だった。勤務時間や勤務日数は正規の教員と同じ。任期は4月1日から翌年3月29日までだった。
 驚くのは収入だ。15年度の年間所得は約246万円。その教員は一人親で子どもが2人いる。K市の就学援助制度の認定基準は親子3人世帯で約262万円。正規教員と同じ業務をしているのに、就学援助を受けるほど低水準なのだ。
 この事例には非正規教員の抱える問題外凝縮されている。一つは給与に上限が設定されていることだ。K市の同年齢の正規教員は給料月額が標準で36万円、年齢を重ねるごとに上昇する。一方、この教員は同じ仕事内容なのに約22万円と4割も低く、上昇しない。
 K市に限らず、非正規教員の給料については多くの自治体が上限を設定している。非正規教員の実態を知る日教組の薄田綾子・中央執行委員によると「新卒から非正規教員を続けると、約10年で昇給が止まる」という。背景には「臨時」である非正規が長く働くと想定していなかったことがあるようだ。
 なお非正規教員には「臨時的任用教員(臨任)」と「非常勤講師」がある。前出のK市の教員は臨任に当たり、正規と同じ業務を行い、担任や部活動の顧問にもなる。基本的に授業のみを担当する非常勤講師は時給制で、夏休みなど授業がなければ給料はでない。

 従来、民間経歴等を有する者の初任給決定については、公務部内の長期勤続者を優遇する観点等から、いわゆる「初号制限」が設けられてきた。具体的には、民間経験等の採用前の前歴について一定のルールで号俸を加算するのだが、その際、上位の職務の級の初号の水準を上回らないこととする制限であった。この制限については、旧教(二)(三)には特例が認められており、旧教(二)については、1級は19号俸まで、2級は29号俸まで、旧教(三)については、1級は15号俸まで、2級は30号俸までの範囲内で初任給の号俸を決定することができることになっていたのである。(「教育職俸給表の適用を受ける職員の職務の級及び俸給月額の決定等について」(昭和39年12月28日給実乙第74号))
 この初号制限については、平成18年の給与構造改革の際に、有用な民間経験を持つ者の初任給を公務に直採用された者と同等に決定することが可能となるよう見直しされ、撤廃されたのだが、週刊東洋経済が紹介しているK市の上限の記事については、おそらく、従来の初号制限が撤廃されずに残っているということではないか。

 旧教(三)の上限であった1級15号俸は、給与構造改革後は1級53号俸に相当する。これは大卒直後に常勤講師になり、8年経験で到達する号俸である。つまり、給与構造改革前の11級制時代の旧5級(相困係長)の初号相当の号俸ということになる。平成27年4月適用の全人連モデルでは、224,700円(教職調整額を加算して233,688円、地域手当10%とすれば257,056円)である。
 ちなみに、大卒直後に正規教諭に採用され標準昇給して41歳ということは、経験19年となるので、2級の初任給=13号俸に4号×19年=76号俸を加算して2級89号俸となり、358,800円(教職調整額を加算すれば373,152円、地域手当を考慮すると10%で410,467円)になる。
概ね週刊東洋経済の記事内容と同じと考えてよいだろう。


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459. 「学校が壊れる」週間東洋経済 [8.トピック]

 旧聞に属するのだが、週刊東洋経済の2017.9.16号の特集は、「学校が壊れる」と題して、過労死ラインを超える残業が常態化する学校現場を取り上げている。
トップの記事は、「教員の異常な勤務実態 過労死ライン超えが続出」との見出しをつけて、4月に文科省が公表した教員勤務実態調査(速報値)を紹介している。続いて、「ブラック化する部活動 中学校の教員に重い負担」との見出しで、日本体育協会の調査を紹介しながら、部活動業務の実態を取り上げている。そして、「長時間活動すると最低賃金未満に」との記事がでてくる。

長時間活動すると最低賃金未満に
 部活動問題で深刻なのは、長時間労働の一因になったり、休みが取れなかったりすることだけではない。そもそも教員は「給特法」で残業代が出ないため、部活動の指導をしてもしなくても給料は同じだ。休日の活動には手当が出るが、その額は多くない。
たとえば東京都の場合、市区町村によって多少の違いはあるが平日の手当はなく、休日は4時間以上で4000円だ。ただ、活動が6時間でも8時間でも増えない。5時間部活動を指導したら、東京都の最低賃金932円を割り込んでしまう計算だ。学校外に練習試合に出掛けた場合の交通費もない。

 東京都では4000円だが、大半の県は、義務教育費国庫負担金の基準と同じ3000円だと思う。4時間で割れば750円、5時間で割れば600円となる。こういう計算をして最低賃金と比較すると「最低賃金未満だ」ということになる。
 以前にもこのノートで言及したが、部活動手当は特殊勤務手当である。おおざっぱに言えば、仕事の困難さや負担の重さに対して通常の給料だけでは少ないために上乗せする手当なのである。勤務時間外に当該業務に従事した場合には、時間外勤務手当が支給された上に該当の特殊勤務手当が支給されるのである。そうすると、上乗せ手当のみを最低賃金と比較するのは、制度上はおかしいということになる。

 しかし、である。部活動手当は教員特殊業務手当の一つなのだが、一般の特殊勤務手当とは大きくことなるところがある。一般の特殊勤務手当については、「◇◇手当は、◇◇職員が、◇◇業務に従事したときに支給する」と規定されているのだが、部活動手当を含む教員特殊業務手当については、「教諭等が、次に掲げる業務に従事した場合において、その業務が心身に著しい負担を与えると人事委員会が認める程度に及ぶときに支給する」となっている。具体的には、泊を伴うものや休日等に実施するものを対象とすることから、ほぼ時間外勤務をしたときに支給される手当となっている。一般の特殊勤務手当なら、勤務時間の内外は問わないのに、部活動手当などについては勤務時間内は支給せず、休日等の場合のみ支給することになっている。教員特殊業務手当については、給特法に基づく教職調整額とセットで設けられた経緯があるのだが、教員だけの特殊な取扱いになっているのである。

 6月、中教審に「働き方改革特別部会」が設置され、年内の緊急対策をとりまとめるべく、精力的に審議をしている。教員が担っている業務の役割分担と適正化を中心に議論してきたが、今後は、教員の勤務のあり方や処遇が議論されるようである。
 11月28日の特別部会に中間まとめの案が示された。気になる箇所を抜粋する。

「このような状況を踏まえ,文部科学省は,公立学校の教師の長時間勤務の改善に向け,業務の総量を削減するにあたり,勤務の特殊性にも留意しつつ,勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインを早急に検討して示すべきである。」と述べた上で、
「給特法の在り方及び1年単位の変形労働時間制の導入については,中教審も含め,過去に数次にわたり検討がなされてきたが,給与の問題に加え,学校の組織運営,教師の勤務時間管理,教師の時間外における勤務の在り方などにも大きく影響する問題であり,結論が出されていない。」として、平成20 年9月に公表された「審議のまとめ」(学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議)における教職調整額制度の見直しについての論点整理を紹介する。
 そして、「これまで本部会において出された意見は,以下のとおりである。」として意見を並べる。このノートが関心を寄せるのは次の意見である。

○ まずは今の業務の総量や長時間勤務を抑制し,その上で,教職調整額と実態とのかい離を埋めていく必要がある。
○ 人事委員会の活動に対して,労働基準監督署等の知見や経験を生かすような方法等は考えられないか。人事委員会と教育委員会との意見交換により,長時間勤務の是正に向けた実効性が表れる。

 そして、次のようにまとめる。
「このような意見を踏まえて,教師の勤務の特殊性も考慮しながら,給特法の在り方も含む教職員の勤務時間等に関する制度の在り方については,引き続き議論を進めていく必要がある。」

 これを読む限り、教職調整額を廃止して時間外勤務手当を支給するということにはならないようである。教職調整額はできれば増額し、一方、長時間労働の歯止めとなる実効ある制度を作れないかということらしい。さて、どのような議論が進んでいくのだろうか。


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